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サンタが遅れてやってきた<キャッチ>番外 

「クリスマスですか。大学の連中で集まってシングルベルだと思いますが」
恋人のいないモテナイ連中ばかりが集まって馬鹿騒ぎ。非常に正しい若い男どもの過ごし方だ。俺はナニを言い出すのかと正面に腰を下ろした滋さんに視線を移した。
恋人になったといっても、五十路の滋さんと大学生の俺では過ごす時間も行く場所も違い過ぎる。
大学が終わってから、夜半に滋さんが店に出勤するまでの間、滋さんの部屋でだらだらと過ごす。ご飯を食べたり、テレビを見たり、そのまぁ、セックスしたり。まるで一緒に暮らしているかのような感じだ。
今も二人して夕方のニュースを見ていた。十一月のハロウィンを過ぎると、東京の街は一気にクリスマスイルミネーションが灯り、ショッピングタウンやマンションの入り口までツリーがお目見えする。そんなイルミネーションの特集がニュースのワンコーナーだった。
「何だ、その意外そうな顔は。俺の年でもクリスマスくらいは知ってるぞ。店にもツリー飾らせてるしな。そろそろランパブはミニスカサンタの出番だ」
「ランジェリーパブで、ミニスカサンタなんですか?」
「おう。若ぇ連中は好きだな。ああいうイベント」
滋さんはソープランドの他に、ランジェリーパブとカフェも経営している実業家だ。
「で、お前はどうだ?」
「んー。家でもやったことないんで。何をすればいいのかさっぱり。ケーキとチキンで夕飯にしますか。あ、プレゼントっていります? 何か欲しいものってありますか」
俺の実家はそういうのには無関心な家だったので、イベントごとは入学式・卒業式・運動会など、学校行事にまつわるものばかりだ。東京に出てきた頃は、世間にはこんなにイベントがあるんだ、忙しいなと感じたくらいである。
「そうか。大学の連中と呑むのはいいが、夜通しは禁止だぞ」
頭をぽんと叩いて、滋さんが立ち上がる。滋さんはもう出勤の時間だ。きっちりとオーダーメイドのスーツに身を包み振り返る。
「行ってくる」
「いってらっしゃい」
ニヤリと険のある独特の笑い方。これが俺は大好きだ。自信満々な大人の男を感じさせるそれに俺は見とれつつも送り出した。

「あれ、柳くん。元気ないね」
背の高いバーテンダーが心配そうに俺を覗き込む。
「オーナーと喧嘩でもした?」
「まさか」
滋さんと一緒に入ったカフェは、現在の俺のバイト先だ。カクテルも出すカフェは、実は滋さんの経営する店の一つだ。店の隅にはツリーとその前で待ち合わせをしているらしい腕時計を見下ろしたスーツ姿のマネキンが立っている。もちろん、スーツはスミさん作のものだ。
「その割には、うらやましそうにツリー眺めてるからさ」
揄うような声に、俺はぐっと詰まる。
「そんなに物欲しげでした?」
「極論だな。そういうことじゃなくて、いいなーって思うこと無い?」
ちょっとお高めな値段設定の所為か、店には夜半過ぎの来店は殆ど無い。残業帰りのサラリーマンならもっと安価な店だろうし、お洒落な銀座の店を楽しみに来る女性客はもっと早い時間の来店だ。滋さんの好意に甘えている自覚はあるだけに、もっとというのは強欲な気がする。
「いいなーですか」
「そ。幸せそうなカップル見て、チクショーって思うか、いいな羨ましいなって思うかって、その時の自分の心の持ちようでしょ」
「心の持ちよう?」
バーテンの航(わたる)さんは軽く肩をすくめた。外国人みたいな仕草が嫌味無く似合う人を俺はこの人しか知らない。
「クリスマスだからねぇ。俺もプレゼント上げるような人欲しいなと思うよ。浮かれた街の様子って、こっちまで楽しくならない?」
店のウィンドウ越しに街を眺める航さんは、本当に楽しそうだ。
「乗ってみるのも悪くないでしょ。特に君みたいな子は。いいじゃない、優しくて大人な恋人もいるのに、何がご不満」
「不満があるわけじゃ……」
無いと続けようとして、俺は口篭る。クリスマスの予定を聞いてきたのに、大学の連中と出掛ける俺を止めない滋さんが不満なんだ。
「ほら、あるだろ。素直になる。欲しいものは欲しいって言わないと。オジサン判らないよ」
にっこりと微笑まれて、俺の頭にぽんと手を置かれる。何だか、田舎ものの俺が頼りなくみえるのか、周囲の大人たちには俺の頭を撫でる人が多かった。
「プレゼントって何がいいですかね」
「オーナーなら、欲しいものは自分で買えるだろ。いっそ、君にリボンでも掛ければ?」
航さんは完全にからかいモードだ。想像したのかゲラゲラ笑う。俺も笑った。
「それはさすがにキモイですよー」
「悪い。俺もそう思った」
二人して笑い合っていると、扉が開く。俺たちは笑いを引っ込め、声を揃えた。
「いらっしゃいませ」

「なぁ、曳田。お前さ、親父さんに贈り物とかすることある」
「何だ、いきなり」
学食で一緒に飯を食っていた曳田に話を振る。曳田の家は、妹が小さくて何かといえば家族で過ごしているらしかった。
「親父さんくらいの年の男への贈り物って何がいいかな。世話になってる相手に贈りたいんだけど、うちってそういう習慣無くてさ」
「ああ。ネクタイとかじゃねーか、定番。おっさんならスーツ着るだろ」
ネクタイ。オーダーメイドのあのスーツに?
「怖くて買えない」
金額、どのくらいになるだろう。というか、あのスーツに似合うネクタイを選ぶ自信が無い。
「ブランドスーツ着てる類か。でもネクタイなら、そんなに高くないだろ。ブランドものなら同じスーツ作ってる店に行って、それ指差して、これに似合うネクタイ下さいって言えばいい」
「あ、そうか」
いわれて気付く。スミさんのテーラー、あそこで買えばいいんだ。
「それとも酒。洋酒の高いやつとか。でも大学に入ってからは、お前も呑めってうるせーから贈らなくなった。妹も嫌な顔するし」
嫌そうな顔の曳田だが、俺は微笑ましいくらいだ。一緒に呑もうと誘う父親と、それに苦い顔をする妹。暖かい家族の図。
「曳田、ホントに妹に弱いな」
「うるせぇ」
「でも、参考になった。ありがとう」
俺は最後のハンバーグを口に放り込むと席を立った。だが、その俺に続くように曳田が立ち上がる。
「付き合ってやるよ。何処に行くんだ?」
「あ、いや、いいよ。決まってるし」
「ふん?」
いつもなら考えつつ口を開く俺の、反射的な遠慮は十二分に怪しかったらしい。結局曳田に強引について来られる羽目になってしまった。
「いらっしゃいませ。おや、柳くん」
落ち着いたスミさんの声に迎えられる。この人も滋さん程では無いが、厳つい顔と身体つきだ。
「こんにちは。あの、ここでネクタイって買えますか?」
「ええ。柳くんのですか。それともそちらのお友達の」
柔らかな笑顔が俺と曳田を見る。俺は首を振った。
「いえ、滋さんにプレゼントをしたいんですけれど」
「シゲの奴の。だったら、作りましょうか。ちょうど、私的な理由で一週間程空けてあるんですよ」
それは願っても無い。やっぱり、スミさんのスーツを着ているときの滋さんが一番カッコいい。
「そうですね。柳くんからの贈り物なら普段とは少し感じを変えましょうか」
言いながらスミさんが取り出した布は、落ち着いた深い緑。ダークスーツばかりの滋さんでも似合いそうだけれど、普段は着ない色合いだった。やっぱり、スミさんセンスいいや。
かなりの出費を覚悟して、金額を聞くと、そこいらで売ってるブランドのネクタイと変わらない。俺はほっとして支払いを終えた。
「あ、あの……」
「シゲには内緒、ですよね。もちろんですよ」
はっとして顔を上げると、優しい声音が降ってくる。スミさんは人差し指を口元に当てて、可笑しそうに笑った。
「またのご来店をお待ち申し上げております。金曜には出来上がりますので」
深く頭を下げられ、俺は面映い気持ちで店を出る。何を言われるかとビクついていた曳田も珍しそうにキョロキョロと店を見回すだけだった。
「お前が高級店を知ってるなんて、可笑しいなと思ったけれど、単に近所の店か。あの金額で作れるなら、俺も次はここにしようかな」
「うん、そうしてくれればスミさんも喜ぶよ」
近所のよしみだと思ってくれたらしい。曳田と別れ、俺は下宿へと向かう。さすがにここまで来て、滋さんのマンションへ直行したのでは怪しすぎる。

「じゃ、そろそろ上がります」
シンデレラの魔法も解ける深夜の営業を終え、俺がカフェを出たのは、クリスマスイブも終わり、クリスマスになった頃だった。結局俺は大学の連中の誘いを断り、バイトへ出た。
さすがに何処の店も満員らしく、うちのようなカフェにも深夜まで来客があり、結構忙しく働く。戸締りを航さんに任せ、外へ出ると冷たい風が身に沁みた。
「遅かったな」
馴染みのありすぎる声に俺は振り返る。そこにいるはずのない滋さんがいた。
「滋、さん。どうしたんです」
「仕事は早上がりしてきた。何かあれば呼び出されるかもしれないが」
俺の言いたいことを正確に読んだ滋さんが答えを返す。
「とりあえず家に帰るぞ。寒い」
滋さんに伴われ、マンションへと向う。抱き寄せられて感じる滋さんの皮のロングコートが冷たい。
マンションの扉を開くとそこは少し暖かかった。どうやら一旦帰宅してから俺を迎えに来たらしい。まぁ、俺も今日は下宿に帰らないつもりだったし、ちょうどいい。
「滋さん、メリークリスマス」
玄関先で取り出したプレゼントの包みを差し出した。滋さんが、目を見開き、照れたように頭を掻く。
「お前に先越されちまったな」
滋さんが笑って俺の背を押しだした。部屋の中に入ると、ローストチキンと色とりどりの前菜。ケーキ。シャンパンだろうか酒のビンがある。
「滋さん、これ」
「やったことないって言ってただろ。プレゼントもあるぞ」
思わず抱きついた。嬉しすぎる、俺のためなんだ。
「煽るな。そのままベッドへ直行するぞ」
「直行しても構いません」
へらっと笑った俺を、滋さんは抱きかかえてベッドの上に下ろすと、そのままキスをされる。ローストチキンの味見をしたのか、スパイスの味がする舌をそのまま味わった。
「お前はホント、俺を煽るのが上手いな」
「滋さんだけです」
「当たり前だ」
俺の答えに滋さんは怒ったような声で断言すると、俺の口をもう一度塞ぐ。俺は幸せな気分で重なる高い体温を感じていた。

「やりやがったな。スミ」
翌朝、プレゼントを開いた俺たちは、双方あんぐりと口を開けた。
滋さんから俺へのプレゼントはスーツだ。深い緑でちょっと見には黒に見える。それは俺がプレゼントしたネクタイと同じ布で、つまりは俺と滋さんのネクタイはお揃いな訳。
「スミさん、態とだよね」
「ああ? 当たり前だ。あの野郎」
滋さんは憤慨しているが、俺はちょっとスミさんの悪戯が嬉しかった。俺じゃ、どう転んでもお揃いなんて言い出せない。
笑いがこみ上げた。もう堪えきれない。ゲラゲラと笑い出す俺を滋さんは不思議そうな顔で眺めていたが、やがて一緒に笑い出した。
笑いあいながら、伸びてくる腕が俺をしっかりと抱きしめる。
温かい腕の中。俺の気持ちも暖かくなっていった。

<おわり>

ラブラブなクリスマスで終了です。ありがとうございました。感想の返信は掲示板にて行います。
来週は冬コミのため、秋の無配SSをアップ。お正月三が日は毎日更新「新年SS祭り」です。

<大好きだよ>

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