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旅の空<水の魔方陣・焔の剣>新年SS祭り 

新年SS祭り・第二弾。三位「ソルフェース×リベア」 本編「水の魔方陣・焔の剣」

【旅の空】

リベアは澄み切った空を見上げた。海原は何処までも広い。森と山に囲まれた小国ティアンナで生まれ育ったリベアには、広がる地平も水平線も初めて見るものだった。
「飽きもせんな」
そんなリベアの隣から、声が掛かる。銀の髪の魔術師は、今は旅装の騎士服を身に着けていた。痩身ではあるものの、元々脆弱さを感じさせない肉体は、腰に下げた立派な剣の所為か、何処から見ても騎士そのものに見える。
ただし、その紫紺の瞳さえなければ。だが、紫紺の瞳が魔術師の証であるの知るのは、魔術師の多いティアンナに限ったことだ。他国でバレる心配は無い筈だった。
リベアたちは今、海に囲まれた国・ボーファへの旅の途中である。
「ボーファ。ですか。聞いたことはあります。海に浮かぶ国で、海賊を雇っているとか」
騎士団長自らの呼び出しは多く無い。実際、リベアが以前騎士団長と顔を合わせたのはリベアが焔の剣を手に入れ、国境騎士団から第一騎士団へと配置換えをされた時である。
騎士団長アドレイン将軍は白いものが混じる顎髭を撫でながら、机の前に直立するリベアを見上げた。
「正確には海賊を雇っているのではなく、海賊を私兵として使っているが正しいが」
「私兵。ですか」
「そう。海賊はボーファの私兵なのだ。もちろん、国の許可も得た上でのな」
リベアは特殊な軍の在り様に首を捻ったが、とりあえず唇を引き結んで将軍の次の言葉を待つ。言いたいことはそれではないだろうと見当を付けているからだ。
「その海賊が最近多くの魔物を見るという。最初は海賊どもによくある迷信の類だと思われたが、それにしては目撃をした生き残りたちの証言が一致しすぎているのだ」
将軍はそこで言葉を切り、リベアに強い視線を浴びせる。
「リベア・コントラ。至急ボーファへ出向き、この魔物を退治しろ」
要は第一騎士団一個小隊を差し向けて全滅しては適わない。国の威信にも関わる。故にリベア一人で処理して来いとのありがたい仰せだ。
「は!」
リベアは内心の溜息が出そうな気持ちを押し隠し、恭しく礼を取る。
「守護魔術師は誰か付くだろうから、安心したまえ」
リベアの背中に掛けられた声は、いっそ清々しいほど欺瞞に溢れていたが、リベアは綺麗に無視して、儀礼的に頭を下げるに留めた。
リベアが生き残っていることを喜ばない輩は多い。すでに五十に手の届く年齢になってもリベアは一線の騎士であり続けた。騎士団を引くことを認めはしないが、『英雄』に騎士団の実権を握る位置に来られても困る。おそらく、現第一騎士団隊長であるラフ・シフディが騎士団長となるまで、この嫌がらせは続くに違いない。リベアとしてはひたすらその日を待つしかない訳だ。

「他国の騎士さんたち。船酔いしてないかい」
陽気に声を掛けてきたのは、真紅の髪を背中で括ったまだ少年といっていいくらいの若い男である。
「ああ。気づかいすまない、船長」
リベアは愛想良く応じた。そう、この男はこの海賊船の船長なのだ。背後に立つ体格のいい男がじろじろとリベアを見下ろす。明らかにリベアを胡散臭いと思っていることは間違いない。
今のリベアは『ティアンナの友好使節としてボーファの国王へと目通りを願う、身分の高い騎士』ということになっている。だが、それにしてはリベアは明らかに低い身分の出だと判る物腰だし、ソルフェースも得体のしれない輩にしか見えない。いくら、取り繕ったところで、身分の高い育ちのいい騎士には二人とも到底見えず、救国の英雄と王宮最強の魔術師は、監視の視線だらけの居心地の悪い船旅を送ることとなっていた。
「風が気持ちいいな。空も何処までも広がっている。ティアンナでは有り得無い光景だ。楽しませてもらっている」
リベアは再び空を見上げる。風が短い濃い茶の髪を弄っていった。
「ところで」
ふとソルフェースが口を開く。
「この海に魔物がいると噂があるが、どんな奴なんだ?」
「ソル!」
鋭い口調でソルフェースを遮ったリベアだが、当然それは遅かった。先程の陽気な様子は成りをひそめ、船長の冷たい視線が甲板に座り込んだソルフェースを見下ろす。
ソルフェースはその視線を平然と受け止めた。
「船乗りは迷信深い。そう考えている奴らが多いが、海に魔物は数多く棲む。進路を狂わせ、惑わせて、海の底へ引きずり込む」
船長はソルフェースを見据えたまま、口を開く。
「だが、あれは違う。海から空へと飛び、マストを切り裂き、甲板にいる連中を食い殺す。お前たちも気をつけることだ」
そのまま船長は踵を返し、船の中へと戻っていった。
「空を飛ぶ、魔物、ね」
「海に棲んでいるのか」
「いや、何処からかやってきたと考えるべきだろう。そんな奴がいれば今までに伝説になっていた筈だからな」
魔物がいる海と呼ばれる場所はいくつかあるが、そこは難所と呼ばれる元々航海に適さない場所だ。それ故に『魔物』として伝説になったのだろう。
だが、今回は突然に現れた。
「本物の魔物だな」
ソルフェースの言葉にリベアがうなずく。リベアは眇めるように何処までも続く海原を眺めた。

夜半。リベアとソルフェースは飛び起きる。
馴染んだ気配だ。魔のモノたちの蠢く確かな。甲板へと走り出るソルフェースとリベアを船乗りたちが止める。
「何処へ行く?」
「夜の海は危険だ。落ちたら助からねぇ!」
だが、ソルフェースもリベアも構わず走りぬけた。甲板へと出ると、光る大きな目が見張り番だろう男を見下ろしている。男は、恐怖のあまり一歩も動けなくなっていた。
リベアとソルフェースを追ってきた男たちも同様だ。
大きな口が見張り番を呑み込もうと口を開ける。それをリベアは切り裂いた。
「ソル! 頼んだ」
船乗りたちは当てにならないどころか危険だ。ソルフェースがすばやく中空へ陣を描き、それは船乗りたちを包み込む。
「大丈夫だ。リベア! 思うさま戦え!」
ソルフェースの声に、リベアは目の前にいる魔物に向き合った。蛇に似てはいるが、尾は魚のそれである。魔物の尾が甲板を叩いたかと思うと、飛翔した。
リベアに向い落ちてくる魔物を、剣を構えたまま、じっと待ち構える。
大きく口を開けたその身体を交わし、リベアが跳んだ。狙うのは目。うろこにびっしりと覆われた身体を狙うより確実だと思えた。
絶叫が響き渡る。身を交わし海へと逃げようと計る魔物をリベアは逃がすつもりなど無い。
「蒼流」
リベアが呟くのと同時に、リベアの剣から身を起こした竜はあっという間に大きさを増し、素早く魔物の前へと躍り出た。水の身体を持つ竜が、魔物を見下ろす。
「海神」
船乗りたちが囁いた。
睨みあいは長くは続かない。組し易しと見た魔物が、リベアへと狙いを変えた。リベアへと向う魔物をリベアは待ち構える。リベアを呑み込もうと真っ赤な口が開く。その口をリベアは切り裂いた。返す刃で舌を切り落とす。飛び散る青黒い血がリベアを染め上げた。
断末魔の痙攣を繰り返す魔物の残った片目にリベアが剣を突き立てる。魔物は砂のように崩れ落ちていった。
力を使い果たし倒れるリベアの身体を、ソルフェースが受け止める。
「船室、借りるぞ」
魔法陣に阻まれ、甲板に出て来れなかった船長に、ソルフェースが声を掛けるが船長はもちろん船乗りたちの誰もが口を閉ざしたままだった。

「ソル」
目を覚ましたリベアは、ソルフェースに支えられるように甲板へ座り込んでいた。
抜けるような空の青さが目に染みる。
「何だ?」
「なぁ、お役御免ではあるが、船の上だ。ボーファ国王への報告もある。ゆっくりと旅を楽しむくらいの余裕はあるんじゃないか」
難しい顔をしていたソルフェースの顔が、驚いたようにリベアを見た。それがゆっくりと笑顔に変わっていく。
「そうか、そうだな」
クスクスとソルフェースは笑い声を上げ、その背後から船長が陽気な声を掛けた。
「ティアンナ最強の蒼の魔術師と、伝説の焔の剣の騎士さん。ボーファの女王陛下からの指令は魔物退治かい」
指摘にニヤリとソルフェースが笑う。
「バレたか」
「あんな戦い方をすればね。伝説の騎士というから、もっと若い男かと思っていたよ」
「おっさんで悪いな」
リベアが身体を起こした。
「いやいや、助けてもらったのはこっちだ。このスカーレットスカル号のジョリーロジャー(海賊旗)にかけて、あなた方を無事に陛下の元へと送り届けます」
船長は、ピシリと指を二本起てたボーファ風の最敬礼を寄越す。それをリベアは礼をもって受けいれた。
思いも掛けない休暇は海の上。リベアとソルフェースの二人きりだ。

<おわり>

相変わらずの苦労人・リベア。それでも二人きりは楽しいってことで。
実は今回の海賊船長くんは新シリーズの主人公の一人です。
新年SS祭り・第三弾「そこが俺たちの家」

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