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綺麗な男<転げ落ちた先に>新年SS祭り 

新年SS祭り・第四弾。一位「渥美×鈴木」 本編「転げ落ちた先に」

【綺麗な男】

その日、佐伯英次は暇だった。
夕べ散々抱いたにも関わらず、体力自慢の恋人はとうに出掛けてしまった後。つまりは置いてけ堀を食ってしまった訳だ。一応平均的な正月の用意はした後であるので、汗で濡れたシーツを洗い布団を干した後は何もすることがない。
暇つぶしに出てきたショッピングモールで出食わしたのは私服姿も様になった知り合いだ。ただし、明らかに態度が可笑しい。
「おい、渥美さん。何してんだ?」
「英次、くん」
びくりと振り返った渥美のイケメンは引き攣っていた。どうやら、物陰からテラス席を伺っていたらしい。
「英次くん、君は知ってるのか」
「あん?」
テラス席を指差されて、佐伯は固まった。
そこにいるのは渥美の恋人・鈴木と佐伯の恋人・久世隆大である。久世はきっかりとスーツを着込み、鈴木は柔らかな素材のセーターにロングコート。しかも、その顔を覆うような伊達眼鏡は無く、切れ長の瞳が顕わになったクールな美貌を晒している。つまり、どこから見ても決めきったデートの様相な訳だ。
「あの、野郎」
佐伯はギリっと歯を噛み締める。道理で何も言わずに出掛けた筈だ。てっきり大学の後輩か先輩と初詣か何かと決め付けていた自分の馬鹿さ加減に呆れる。鈴木の美貌にはかなり興味を示していたではないか。
「楽しそうだな」
「ああ。渥美さん、本気か?」
渥美の暢気さに佐伯は勢いよく振り返ったが、そこにいる渥美は穏やかそうな口調とは無縁な澱んだ顔だった。
「あ~と、大丈夫か」
思わず同情してしまう。それだけ、鈴木が大事だということなのだろう。
「縛り付け過ぎたかなと思ってな。俺といるときのアイツはいつも何処かたるそうな感じで。他の男の前だとあんな感じなのかと思うと」
言われて佐伯は鈴木と久世に目をやった。確かに楽しそうではあるが、久世は目一杯格好付けていた。確かにかっきりとしたスーツは胸板が厚く肩幅の広い久世にはもっとも似合う。椅子を引いたり、煙草を吸うのに許可を取ったり、さりげなく会話を弾ませようとしているのか、しきりに話し掛けたりしている。
つまり、余所行きの顔なのだ。
そこではたと思い当たる。渥美は鈴木を比喩ではなく、下にも置かない扱いだ。それに鈴木はすっかり甘えきっている。だが、社会人としていくら何でもやることはやっているはず。
「それ、だるそうなんじゃなく、リラックスしきってるんじゃないか」
「リラックス?」
佐伯の言葉に、渥美は不思議そうに顔を上げた。
「そう、あんたの前なら素のまんまでも大丈夫ってこと。シケた面すんなって。色男台無しだぜ」
佐伯は片目を瞑ってみせる。それに渥美が笑った。
「とりあえず、静観しとこう。もう夕方だし、このまま食事やホテルに行くようなら首根っこ引きずってでも連れて帰るから安心しろよ」
「何ともバイオレンスだな」
呆れたように言う渥美に、佐伯は肩をすくめる。
「まぁ、俺も最初は無理矢理だったんでね。自信なんか無いさ。でも、俺以上のお買い得物件は無いだろうと言い聞かせてる」
「ヒロくんに?」
「いや、自分にさ」
佐伯が掛け値なしの本音を吐くと、渥美は吹き出した。
「君みたいな綺麗な男でもそういうんだな」
「綺麗って言うな」
佐伯はあまり綺麗と言われるのが好きではない。男に対しての褒め言葉だとは思えないのだ。
「綺麗ってのはあんたの男みたいなのを言うんだろ」
ふてぶてしいかと思えば繊細。自信家かと思えば自虐的。だが、それだからこそ守りたくなる相手。渥美はふっと息を吐いた。
「そうだな」
姿形は以前の方がずっと美しいと言える。病気で痩せ細り、年を取った分容姿も衰えてはいる。中性的だった学生時代とは違い、シャープで男性的な顔つきだ。
だが、渥美にとっては何よりも大事な相手。
「鈴木さん。そろそろ行きましょうか」
「ああ。そうだな。目当てもあったし」
席を立って近づいてくるのだろう。話し声がはっきりと聞こえる。
「今日は楽しかったですよ。綺麗な方とご一緒出来ると眼福ですね」
「上手いな。何も出ないぞ」
つれない鈴木の台詞に声を立てて久世が笑った。
「また誘ってください。何時でも付き合います」
「背後を見てから言うんだな」
支払いを終えた久世が、鈴木の言葉に振り返った瞬間、顔を顰める。
「まったく、お前ら丸見えだっつーの。少しは気を利かせろよ。せっかくの美人とのデート台無しだぜ」
「ふん。で、その美人とはここでお別れか。この後があるなんて言おうもんなら、何するか解んねぇぞ」
ドスを効かせた佐伯に久世は肩をすくめた。
「もちろん言いません。素直に帰りますよ。じゃ、鈴木さん」
手を上げた久世は意外な程あっさりと身を翻す。むしろ呆気に取られた佐伯がその後ろを追う羽目になった。
「じゃ、俺たちも帰るか」
いつも通りの鈴木に、正直渥美は拍子抜けになる。堂々と先へ立って歩く鈴木がふと足を止めた。
「お前、車は?」
「置いてきた」
電車で移動する鈴木の後をそれとなく付けてきたから、当然車も置いてきている。
「じゃ、呑めるな。いい店教えてもらったんだ」
「あ、ああ」
鈴木が機嫌よく先を歩くのを渥美は不思議な気分で見つめていた。何だが学生時代に戻ったような気がする。
「ここ?」
鈴木に連れて行かれて、渥美は店の中を見回した。女王陛下は雰囲気のいい店がお好みだ。適度なざわめきと訓練された店員と、美味い料理。確かにそれに当てはまる店ではあるのだが、どちらかと言えばOL御用達といった雰囲気の居酒屋だ。
「いい酒が置いてあるらしい」
「確かに」
メニューを開くと、そうそうお目にかかれない銘柄のものも多い。
「好きなの頼めよ。俺はさっき食ったし」
こんなに積極的な鈴木も珍しい。いつもかったるげで仕事以外に意欲的なところなど、ここ数年お目にかかったこともない。
渥美は怪訝に思いつつも酒とつまみを頼んだ。だが、いつもと違う鈴木に気が気ではない。何を言い出されるかと思うと、せっかくのいい酒も喉を逆流しそうだ。
「何だ。変な顔してるな。せっかくのいい男が台無しだ」
言われて顔を上げる。さっきも佐伯にそういわれた。それから佐伯は何といった?
渥美は思い起こしてニヤリと笑う。
「俺以上のお買い得物件は無い。俺にしとけ」
「そんな顔の方がお前らしいよ」
鈴木もシニカルな笑いを口元に浮かべた。
「やる」
ごそごそとコートのポケットを探っていた鈴木が、ぽんと渥美に箱を放る。濃いエンジ色のリボンの掛かったそれを渥美は反射的に受け取った。
「開けてもいいか」
「当たり前だろ」
鈴木の応えに渥美が包みを開く。小さな化粧箱だ。まるで。
「これはその、そういう意味だと取っていいのか」
「お前の首輪。返品不可だからな」
渥美は取り出して、指に嵌めた。シルバーの細い指輪はありふれたシンプルすぎるくらいのものだ。
そっぽを向いたままの鈴木の手を取り、そっと指先に口付ける。
「女王陛下に一生の忠誠を」
「よきにはからえ」
真摯な呟きに帰ってきたのはいつも通りのそっけない言葉。それでも渥美の胸は満たされていた。

<おわり>

リクエスト渥美×鈴木、佐伯×久世前提の久世×鈴木も詰め込んでみました。でも最後は鈴木から渥美へのプロポーズで。何のかのといいつつ、渥美は鈴木を女扱いしてないので、自分から指輪は贈らないだろうと。
新年は親からいろいろ贈られてくるので、対抗したい鈴木でした。
新年SS祭り・第五弾「大好きだよ」

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