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大好きだよ<キャッチ>新年SS祭り 

新年SS祭り、第五弾。ラストは「キャッチ」で。 本編「キャッチ」

【大好きだよ】

「なぁ、お前ら付き合ってる相手いるか?」
「ボケ! そんなもんおったらこんな所で男同士で管巻いとるかい」
友人の家で集まった正月。男同士の初詣という何とも色気のない集まりの後には、当然のごとく酒盛りが付いて来る。
コタツを囲んでうだうだ呑んでいる中、いきなり陽が話を切り出し、隣の椿に殴られていた。
「僕はいるよ」
ポツリと漏らした都に、その場の男共が食いつく。もちろん、俺も。
「おるんかい、都。どんな相手じゃ」
和歌山出身の椿は関西弁丸出しで食って掛かった。それに都はクスリと笑う。
「もちろん、年上の社会人だよ。大人で僕の我侭も受け止めてくれて、すっごく優しいんだー」
都の言葉に、俺たちは全員納得。都は姿も可愛い系なんだが、言動が擦れてない。いい意味で真っ直ぐで、かといって融通の利かない頑固な清廉さは無く、俺たちは最初はいいところのお坊ちゃんかと思っていたくらいだ。ところが都の家は、いま集まっているこの平均的な2DKのアパートで、父親と二人暮らしである。
「でも、柳もでしょ」
「へ?」
都は悪戯っぽく笑って俺を意味ありげに見た。
「柳さぁ、ここんとこちょっと大人っぽくなったよね。柳って大きな身体の癖に、僕よりもお子ちゃま丸出しだったのに。さぁ、吐け」
ずいっと身体を乗り出した都に迫られて、俺は腰が引ける。
「い、いるよ」
これで陽が『付き合ってる女はいるか』と聞いたのなら、『いない』と答えたのだろうが。何故なら滋さんは女ではないからだ。
「かぁ、お前もおんのかい! 何で今日は一緒じゃないんじゃ! 正月じゃぞ、こら」
そう言われても困る。
「新年会だって言ってた。商工会っていうの? その後に同窓会なんだって」
「商工会! 社長さんなの? しかもその後に同窓会って東京の人?」
何だか都の食いつきがいい気がするのは気のせいか。お前、自分から話を逸らそうとしてないか。
「う、うん。いくつかお店持ってるよ。今のバイト先のオーナー。下宿先の近所に住んでたんだって。下宿先の近くのテーラーの人が幼馴染」
性別さえ隠せば、ある程度は本当のことを話していいと滋さんは言っていた。嘘を吐くとどうしても話が合わなくなるから、俺には無理だろうって。
「柳の下宿って西銀座だっけ。銀座のお店のオーナーってすごくない?」
「いや、銀座って言っても、裏通りは普通に下町だよ。新橋も近いし。俺の下宿、都も来ただろ」
そんな大げさな想像は止めてほしい。都はともかく陽や椿の目の色が変わった気がするぞ。
「ああ。こじんまりとしたいかにもな定食屋だったねぇ。豚バラ美味しかった」
都の言葉に、椿と陽がしょぼんと沈む。お前ら、絶対にたかりに来る気だっただろう! 
「でもさ。心配じゃないの?」
「何が」
「新年会に同窓会。同じ社長さんとか、同級生の大人の男とか」
滋さんと同じきちんとした大人の人たち。
「そりゃ心配だよ。心配だけどさ。キリ無いだろ。仕事してるときだって周りに一杯人いるんだろうし、俺がそこで仕事出来る訳じゃない。それに」
それに滋さんに言われてるんだ。
「俺があっちに心配してるのと同じように、向こうは俺の周りに心配してるんだってさ」
俺の周囲には同じ年頃の連中いれば、教授や大学の職員もいる。でも滋さんはそこへ行くことは出来ないんだ。
「そんなの、結婚してる夫婦だって同じだろって言われた」
大事なのはお互いの気持ちだって。気恥ずかしい気持ちで滋さんの言葉を思い起こす。
「あーもう、こいつ腹立つ!」
「幸せで何よりじゃ。馬鹿馬鹿しゅうて聞いとられんわ」
「ごちそうさまです」
陽にいきなりヘッドロックをかまされ、椿は天を仰ぎ、都には頭を下げられた。何だ、この展開。俺、何か可笑しいこと言ったか?
「痛い、痛いって。都、助けて」
「こら、いくらなんでも騒ぎ過ぎだ」
手を伸ばして都に助けを求めると、からりと襖が開いて都のお父さんが軽く陽の頭を叩いた。
「お雑煮、食べるだろう。ビールばかりじゃ身体に悪いよ」
柔らかだが有無を言わさない口調で、都のお父さんは俺たちを見下ろす。
「はーい。お父さん」
「はい」
都が元気一杯に手を上げるのに、俺たちも逆らえない感じで返事をした。
「たくさん食べなさい」
「うわー。肉巻き寿司! ありがとう」
都の性格は絶対にこの人に負っているところが大きいだろう。都がいいことをすればきちんと褒める。叱るときには都の友達も叱る。しかも料理も上手い。
「あの、おじさん。これ美味しいんですけど。ソース、何ですか?」
野菜を肉で巻いて食べるだけなんだけど、ソースが何種類もあって飽きない。これなら、俺でも作れそうだ。
「ああ。後で作り方書いてあげるよ。恋人に作ってあげるといい。年上なら心配だろう」
俺は真っ赤になって下を向く。
「あれだけ声が大きければ聞こえるよ。俺もこの年になっても腹が出ないのは都にバランス考えて作る所為だろうからな。忙しい人なら心配して当たり前だよ」
にっこりと笑うお父さんに、からかうような感じはまったく無かった。

夕方になって都の家を出る。
「また、おいで」
そういってくれるのもいつものことだ。
「何か悩むことがあったら、訪ねてきなさい。おじさんで良ければ話は聞くよ」
ただ今日だけ、俺に向ってそう付け足す。要は恋愛相談に乗るということだろう。俺はびっくりしたが、お父さんの気持ちが嬉しくてうなずいた。
階段を下りる陽と椿の後を追いつつ、もう一度頭を下げようと振り向く。玄関先にはまだ都とお父さんがいて、都がお父さんに抱きつき、触れるだけのキスをした。
目を見開いて立ち尽くす俺の前で静かに扉が閉まった。
「ああ。そういうことか」
お父さんの言葉がすとんと腑に落ちる。俺の相手が男だって解ったから、ああ言ったんだ。
『年上で優しくて、俺の我侭も受け止めてくれる人』
都が言った言葉を思い出す。
「おい、柳。何しとんじゃ、カラオケ行くでー」
「そうだ、そうだ。お前の奢りだぞ」
前を歩く椿たちが振り向いたが、俺は走り出していた。
「悪い、俺、帰る」
全速力で走る俺に、絡み酒で千鳥足の椿たちが追いつく筈も無い。
「会いたい」
新年会だと遅くなるかな。でも家で待っていたい。あ、肉巻き作ろうかな。呑んで帰ってくるだろうからさっぱりしたものがいいよね。
いろいろな思いが俺の中で形を作る。
目指すのは滋さんの部屋。銀座の片隅で大事な人と過ごすための場所は、俺たちが二人で作っていくんだ。

<おわり>

ラストは「キャッチ」だったんですが、大学の連中の酒の肴にされる柳で。
都ちゃんとお父さん。あまりに久しぶりの登場ですが、大学生になった都ちゃんはお父さんと恋人で一緒に暮らしてます。
実は同棲。真実を知るのは小学校からの親友朋くんだけです。
いや、今回凄く楽しかった。懐かしいCPもいて、書くのも懐かしかったです。ありがとうございました!

<貴方と>キャッチ番外

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