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大好きな……。<短編> 

拍手御礼短編を表に出しました。

【大好きな……。】

駅を降りると、すごく熱かった。
でも、駅を出たらお父さんが待っている。
そう思ったら、楽しくなって、僕は一生懸命、出口に向かって走る。
公共の場所では走ってはいけません。なんて先生は言うけど、今はそんなの無視!
一ヶ月ぶりに会う。大好きなお父さんが待ってるんだもん。

「都!」
僕の顔を見ると、お父さんはすごく嬉しそうに笑った。
「お父さん!」
大きく広げたお父さんの腕に飛び込むと、お父さんはそのまま僕を抱え上げてくれた。
「大きくなったなぁ。小学校はどうだ?」
「うん。一年生で一番高いよ。この間、かけっこで一等賞だったんだ!」
「そうか!」
僕は春に一年生になった。
本当は、学校なんて嫌な奴もいっぱいいるんだけど、そんなことお父さんには言わない。お父さん、心配しちゃうもん。
「今日は都の好きなハンバーグにするからな」
「ホント? 甘いにんじんもある?」
「もちろん」
「やった~!」
お母さんと違って、お父さんはとってもお料理上手だ。にんじんだって、ぴーまんだってすごく美味しい。だから、僕は同じクラスの子達みたいに、お野菜嫌いなんて、子供みたいなことは言わない。何でも食べるから、大きいんだって。
「明日は遊園地行こうな。都は何に乗る?」
「ジェットコースター! あと、コーヒーカップがいい!」
「ぐるぐる廻る奴ばっかりだな」
お父さんは、人がたくさんいるところだと、必ず手をつないでくれる。今日も手をつないだまま、お父さんのうちへ帰った。
「ただいま~!」
大きな声で言う。お母さんはお邪魔しますって言うんだよ。って言うけど、何でだろう?
ここはお父さんと僕のうちなんだもん。やっぱりただいまだよ。
「おかえり」
ほら、お父さんだって笑ってる。
「お父さん、ジュース飲んでもいい? お父さんも飲む?」
「そうだな。お父さん、コーヒーがいいな」
冷蔵庫を開けると、缶コーヒーと、僕の大好きなオレンジジュースが入ってる。僕は戸棚から、コップを出して、それにジュースを注いだ。
僕のお茶碗も、お箸も、コップもそのままなのに、どうして、お父さんと一緒にいられないんだろう。
同じクラスの朋くんにどうしてお父さんと一緒に暮らせないの?って聞いたら、「都ちゃんのお父さんとお母さんはリコンしたんだよ」って言ってた。
リコンって何?って聞いたら、お母さんとお父さんが喧嘩して一緒にいられなくなるんだって。
朋くんはいつもとっても物知りだけど、それは違うと思うな。だって、お父さんとお母さんは喧嘩なんかしてないよ。
僕は小さい頃からずっとお父さんといたんだもん。そこに、知らない女の人が来て、「お母さん」だって言われたんだ。
これから、お母さんと暮らすから、お父さんと離れなきゃいけないんだって。
そんなの嫌だって、押入れに隠れて泣いてたら、一ヶ月に一回だけお父さんに会いに来てもいいって言われたんだ。
それでも嫌だって言ったら、お父さんがすごく悲しそうな顔になった。お父さんが悲しいのは、僕はもっと嫌だから、お母さんと暮らすことにしたんだ。
僕がお父さんと離れる日に、お父さんは僕がずっと行きたがってた遊園地に連れて行ってくれた。
帰りにお父さんがおんぶしてくれて、眠くなって、そしたら、お父さんとお母さんが話してた。
「すっかり懐いちゃって。ごめんね、聡」
「いや、俺も早く知らせれば良かったんだ。昌俊が死んでから、あんまり懐いてくれたんで、離せなかった」
「でも、もうアタシが育てるわ。アタシの子だもん。聡も、何時までも、死んだ恋人に縛られていることは無いのよ。昌俊のことは早く忘れて」
「うん。そうするよ。でも、しばらくは都のお父さん代わりでいたいな。ずうずうしいな、俺」
「ううん。この子が分別付くまではそうしてあげて」
眠かったし、判んない言葉がいっぱいあったけど、お父さんが悲しそうなのだけは解かった。
いつか、大きくなったら、僕がお父さんのそばにいてあげる。そしたら、さびしくないよ。

「お父さん、学校で、将来何になりたいかって聞かれたんだ」
「へぇ、都は何になりたいんだ?」
「お嫁さん!」
「おいおい、都は男の子だろう?」
「やっぱり、おかしい?」
そうなんだ。みんな笑うんだ。朋くんだけは、誰のお嫁さんになりたいかって聞いてくれた。
「お父さん」って言ったら、「お父さんと一緒にいたいんだよね」って。
でも、お父さんは困った顔をしている。
「男の子は、お嫁さんを貰うんだ。お嫁さんにはなれないんだよ」
「そうなんだ!」
そうか、それでみんな笑ってたんだ。じゃあね。
「お父さんをもらいたい!」
「え?」
「お父さんが、僕のお嫁さんになって!」
「ええ~~~?」
約束約束。ゆびきりだ!
「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます」
お父さんは困った顔をしてるけど、約束しなきゃ。
でなきゃ、お父さん、誰かにとられちゃう!
「約束ね!」
僕は立ち上がって、驚いてるお父さんの唇に、チューをした。
朋くんは、お嫁さんの約束は唇にチューするんだって言ってたもん。
「絶対に約束だよ!」
お料理上手で、綺麗で優しい、僕のお嫁さん。

<おわり>

来週からは「傭兵と吟遊詩人」パート2です。

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