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傭兵と吟遊詩人2<1> 

年若い傭兵ヴェルハと、吟遊詩人フォゼラ。名実ともに相棒となった二人の新たな仕事は。

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<12> <13> <14>完 <相棒の位置>

「あまり稼げそうなものは無いな」
壁に掛けられたリストを見ながらヴェルハが呟く。
「こいつはどうだ?」
隣でリストを見ていたフォゼラが指を指したのは、貴族の館の護衛だ。
「ああ。そりゃ、本気で護衛だけだ。俺らみたいな若い奴の仕事じゃない。おっさん連中に譲る仕事だ」
傭兵といっても得手不得手もあるし、技量や年齢なども仕事に関わってくる。それぞれが相応しい仕事を請けるのだ。そうしなければ、命を落とすのは自分自身だ。
「そうか」
納得したフォゼラがうなずく。
「山賊退治とか、短期間の戦闘。襲われることが前提の館の警護。俺たちの仕事はそのあたりだ」
「仕事を選べるたぁ、随分と余裕があるじゃねぇか」
掛けられた声にヴェルハは無感動に振り向いた。余所目に見れば、ヴェルハは細身の優男だ。ヴェルハのことを知らない連中に甘く見られることも多い。
「まぁな」
振り向いた先にいたのは、大柄な鉈のような獲物を持った男だ。ヴェルハは平然と返答すると、フォゼラを促して斡旋屋を出る。
「言わせておいていいのか?」
「ああ。相手の技量も測れんような輩だ。二度と会うことも無いだろう」
傭兵というのは面子を重んじるのかと思っていたが、そうでもないらしい。ヴェルハにしてみれば、身ごなしを見た瞬間にヴェルハの技量を測れないような男ならば、同じ仕事をすることも無いということか。
「傭兵としての仕事が無いと解れば、芸人としての仕事をするだけだ」
「そうだな。広場へ行くか」
振り向いたヴェルハはすっかりと芸人の顔になっている。それにフォゼラは笑いを浮かべ、二人で広場へと向った。

「ヴェルハ。お前の歌を」
ヴェルハがすらりと剣を抜き放つ。同時にフォゼラの三弦が力強い旋律を奏でだした。目の前に剣を掲げたまま、微動だにしないヴェルハの口から、朗々とした歌声が流れ出す。
長い黒髪が、吹く風に舞う。
歌い上げるのは『漆黒い旋風の歌』。
黒い瞳・黒い髪。黒いマントを纏う誰よりも強くあろうとする男。その剣を振るい納めるとき、男の前には屍だけが横たわる。
フォゼラの旋律と、ヴェルハの声が重なり、奏でる音色の調子が変わった。
打って変わって今度は明るい旋律だ。
旅から旅を続ける小屋芸人たち。いろいろな事情はあるが、今は家族。皆と一緒ならば、どんな困難も乗り越える。
フォゼラが作った新しい歌だ。
楽しげに明るい旋律を歌い上げるヴェルハの横で、フォゼラは三弦を止めたかと思うと、剣舞を舞い、曲芸の真似事を始める。
コミカルなそれに、観客から笑いが上がった。
再び三弦を手に取り、旋律を奏でながらヴェルハと声を揃える。乗りのいい客らしく、幾度か同じ節を繰り返すと、一緒に歌い始めた。
歌い終わり、頭を下げると割れんばかりの拍手が二人を包み込む。投げられる銅貨を受け取る二人に聞いていた観客の一人が声を掛けた。
「芸人さん、明日も歌うかい?」
「さて、風の吹くまま気の向くままの旅芸人でございます。そればかりは天のみぞ知ること」
「じゃあ、明日も聞けるかどうかは運だね」
その問いにフォゼラは曖昧な笑みだけを浮かべ、広場を後にした。後ろをヴェルハがついてくる。
しばらくして、ヴェルハは前を歩くフォゼラの肩を引き寄せ、耳元に囁いた。
「走るぞ」
「ああ」
広場でもずっと視線を感じていたが、どうやら追ってきたらしい。背後の気配を振り切るつもりで二人は走り出した。
路地裏に入った場所で二手に分かれる。
この街は元々が城砦都市であり、通路は曲がりくねった迷路のようになっている。細い通路が縦横無尽に走り、広場の裏は山に張り付くように街が広がっていた。
駆け上がったヴェルハは張り出した屋根にひらりと飛び乗る。身を隠し、追ってきた男が通り過ぎるのを待って、男の背後に立った。
ぎくりとした男が足を止める。振り向いた男が怯えた瞳をヴェルハへと向けた。
「何の用だ?」
きちんと首元まで閉じられた騎士服を見るまでもなく、仕草や身ごなしで何処かの貴族の警護か、街の警備兵という事は判る。だが、この街で何か目を付けられるような覚えはヴェルハには無かった。フォゼラにしてもそれは同様だろう。
「お前たちの宿を確かめたかっただけだ。意図は無い」
「俺たちは国王軍に何かあるわけじゃないぞ」
緊張しながらも、真っ直ぐにヴェルハを見た男が、背後から降ってきたフォゼラの声に、より一層身を竦ませた。
「国王軍?」
「ああ。国王軍の制服だ。以前に街で歌ったときも見かけた」
小屋にいた頃からの旅暮らしであるフォゼラは、ヴェルハに比べるといろいろな国に滞在したことがある。
「それが俺たちの宿を確かめて何をする気だ?」
「お前たちの歌を主人が気に入ったと言っている。明日もあそこで歌うかどうか確かめたかっただけだ」
騎士の言葉に、フォゼラとヴェルハは顔を見合わせた。国王軍の騎士が仕える主人となれば、王家に連なるものということだ。
「気に入ってもらえたのは嬉しいが、次回からは正面切って来てほしいもんだな。切り捨てられても文句は言えんぞ」
「俺たちも修羅場は潜っている身なんでな」
ヴェルハがきびすを返し、それにフォゼラが続く。詳しい話など聞きたくもない。
「待ってくれ。何処に泊まっているかを」
「これから探すところだ」
食い下がってくるクソ真面目な騎士に、ヴェルハが呆れた声を上げた。足早に繁華街へと向おうとするヴェルハたちの後ろを、騎士にしては小柄な身体が必死に追いかけてくる。
「まずは、飯だ。おい、お前」
背後をついて歩く騎士をフォゼラが振り返った。
「飯の旨い酒場を知ってたら教えろ」
「酒場、でいいのか。宿じゃなく?」
「この街はいつから旅芸人も宿に泊めてくれるようになったんだ?」
まだ若い騎士が、キョトンとした顔でフォゼラに問い返したが、フォゼラの答えは明快なものだった。きちんとした宿に泊まるには『出身地の鑑札』が必要なのだ。旅から旅への芸人がそんなものを持っている訳がない。フォゼラもヴェルハも所持しているのは自分の職業を明確に示す『職札』だけだ。
「ああ、そうか。それならば、行きつけがある」
どうやら、どうせ付いて来るのならばと、フォゼラは騎士を案内役に使うつもりらしい。ヴェルハには無い思考に舌を巻きつつ、二人の後を追って歩き出した。

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