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傭兵と吟遊詩人2<2>*R15 

騎士が案内したのは、どうやら上級騎士連中の集まる酒場のようで、小奇麗で品の良い店の造りだ。ヴェルハは明らかに解っていない騎士に舌打ちをしたが、それでも席を立つようなことはしなかった。フォゼラは、そんなヴェルハの態度にしのび笑いを漏らす。
「ここ安くて旨いんだ」
そんな二人の表情にも気づかず、育ちのいいらしい騎士は無邪気に笑った。
「あ、ダマール。今日、宿空いてる?」
店の主人らしい男に気さくに話しかけるところを見ると、どうやら常連であるらしい。酒場の主人らしい男も、愛想よく応じていた。
「空いてるよ。お二人さんかい?」
「ああ。部屋はひとつでいい」
主人の値踏みをするような視線にヴェルハとフォゼラは平然としている。こんなことは日常茶飯事だ。下町の安酒場ならともかく、こんな場所では胡散臭いことこの上ないだろう。断られることも折込済みだ。
「芸人さんだね。一曲歌ってもらってもいいかね」
目敏くフォゼラの握る三弦に気付いたらしい男が歌をねだるが、それも疑っているからだろう。
「ダマール。この二人の歌は素敵だよ。女将さんに恋歌をプレゼントしてあげなよ」
広場で聞いていたらしい騎士が無邪気な一言を告げる。騎士は主人の胡散臭げな目線には気付いていないようだ。もしかすると酒場の形を借りた、騎士たちの動向の見張り所であるのかもしれない。
「いやぁ。芸人さんの歌なんぞ滅多に聞けないからな。最近流行ってるとかいう『戦女神』の歌なんかどうかね?」
さり気なく主人が振ってきたが、流行り歌は芸人であればもっとも客受けのいいものだ。きちんと芸で身を立てる身であれば歌える筈である。
挑戦的な選曲に、ヴェルハとフォゼラは立ち上がり、店のカウンターの前へと陣取った。
フォゼラが磨かれた床へ座り、三弦を掻き鳴らしだすと、ヴェルハがすらりと長剣を抜く。力強い旋律と朗々とした歌声が店中に響き渡った。
まっすぐに剣を掲げた長い黒髪の男が、強さに秘められた悲しい女の生き様を歌う。それは何処かヴェルハの人生に共通しているとフォゼラは思う。
戦うことでしか生きる道を得られなかった女。心はいつも故郷のあの子の下へ。
ヴェルハが戦う男であるからこそ、その歌声は女の悲しいまでの強さを歌い上げる。
絡み合う旋律と歌声が終わったとき、酒場はシンと静まり返っていた。
あまりに真に迫った戦士の心情に、騎士たちは言葉も無い。誰よりも先に我に返ったのは酒場の主人だ。はっとして手を叩く。
それに、酒場の客たちも同調し、周囲に拍手の渦が沸き起こった。
「これは、すごい芸人さんだな。ぜひともうちに泊まってくれ」
肩を叩いたダマールが、席へ戻るように促す。でないと、客たちが続きを聞きたがりそうな雰囲気だったからだ。
「素晴らしい歌を聞かせてもらった礼だ。腕によりを掛けよう」
「すごく真に迫ってた」
笑いながらダマールが立ち去ると、若い騎士がほうっと溜息と共に感想を吐き出す。
「当たり前だ。これはフォゼラが作った歌だ」
自慢気にヴェルハが胸を反らした。それに騎士が目を見開く。
「え? お前が吟遊詩人?」
「単なる流れの芸人ですよ。歌も作ります。いつも同じでは飽きられますので。半年前までシュエルドにいましたから、そのときの芸人仲間が広めたのでしょう」
「へぇ。本当に旅から旅なんだな。この歌って、ドローレスの元王妃のことだろ」
感心したように、騎士が訪ねてくる。その様子は、明らかに単なる好奇心であることが明らかであったので、フォゼラも軽く雑談を交わす。
「現在はソレルのドノヴァン伯爵夫人です。伯爵様の芸人として雇われたこともございますので」
フォゼラはさらりと事実とは異なることを織り交ぜた。完全な嘘ではない。フォゼラの顔を、騎士がじっと見つめた。
「何か?」
「お前らを雇うことは可能なんだな?」
「期間限定でな」
騎士の質問にはヴェルハが答える。安酒場では味わえない濃い果実酒で喉を潤しつつ、フォゼラは場をヴェルハに任せた。
「期間限定?」
「俺たちはひとところに留まるつもりは無い。この生活が気に入ってるからな。雇われるのはひと時だ」
「何故」
「旅から旅への生活が、フォゼラの歌の元だ。歌わなくなった春告鳥に用は無いだろう」
ヴェルハの言葉に、フォゼラははっとした。この男は見ていないようでフォゼラの事をよく見ている。
「フォゼラの旋律は俺の安らぎだ。壊すものは」
ギラリとヴェルハの目が殺気を帯びた。それに騎士がびくりと身体をすくませる。
「ヴェルハ」
まだ若い騎士には荷が重過ぎるだろうと、ヴェルハの肩をフォゼラが叩く。
「旨いぞ。お前も呑め」
ヴェルハの意識を目の前の果実酒に向けて、フォゼラは改めて騎士に向き直った。
「目的は達したでしょう。これ以上は相棒も警戒します。どうぞ、お戻りください」
丁寧だが、有無を言わさない口調に、若い騎士は渋々と席を立つ。明らかに何か言いたげな風情の騎士が何度も振り返るのを、フォゼラは笑顔で見送った。

案内された部屋は、小さな酒場にしてはしっかりとした造りの個室だ。建て付けの悪い壁で仕切ってあるだけということも多い安酒場の部屋とは違う。
おそらくは上級騎士たちの密談にでも使用されるのかもしれない。部屋にはベッドの他にソファとテーブルまであった。
ベッドへごろりと転がったフォゼラの上に、ヴェルハが圧し掛かる。
「何だ?」
さざめく様な笑い声を上げながら、フォゼラが聞いた。ヴェルハは悪戯っぽく笑うと、そのまま唇を重ねてくる。
「見張られてるぞ」
名残惜しげに唇を離したヴェルハの耳元に、フォゼラが囁いた。飾り扉を装った壁の向こうに微かな気配ある。
「構うか」
だが唯我独尊の傭兵は、一言で切り捨て、フォゼラの身体をまさぐる手は止まることは無い。
くつろげた胸元は逞しく浅黒い肌が覗いている。そこかしこに口付け、所有の印を散らすヴェルハの股間に、煽るようなフォゼラの指が添えられた。
「欲しいか?」
フォゼラとしては、じれったい愛撫を自分に施すよりも、もっとヴェルハにストレートに楽しんで欲しいのだが、ヴェルハは必ず茶化すように、フォゼラはどうだと訊ねてくる。
「欲しいのはお前だろう」
半ば呆れ、半ば感心しながらフォゼラは問い返した。
「ああ。欲しいぜ」
それに応えるヴェルハの瞳は、欲望を隠しもしていない。その強い視線をフォゼラは好ましく思っている。
フォゼラからヴェルハに唇を合わせると、ヴェルハは遠慮なく口腔を貪ってきた。
ヴェルハの指がフォゼラのベルトへと掛かる。その動きを助けるために腰を浮かし、ヴェルハがフォゼラの肌を晒すのを許した。
「あ、うッ」
最低限の肌を晒しただけの状況で、ヴェルハがフォゼラに押し入ってくる。苦痛の声を上げはしたが、抵抗する気は無かった。
荒々しい動きで、ヴェルハがフォゼラの中を蹂躙する。
痴態を晒しながらも、二人の腕は傍にある剣をいつでも取れる位置にあった。視線は油断なく辺りを見回し、危険な気配が無いかを探る。
ヴェルハがフォゼラの股間をまさぐるのを、フォゼラは受け入れ、好きにさせた。
どうやらフォゼラにも愉しんで欲しいと考えているらしいヴェルハに、フォゼラは毎度酔狂なことだと考えつつ、ヴェルハの望むままに声を上げる。
同時に達し、フォゼラに口付けるヴェルハは本心から満たされた表情をしていて、フォゼラも胸の奥が暖かくなるのを感じていた。

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