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傭兵と吟遊詩人2<9>*R15 

「フォゼラ。非常に言い難いのだが……、断ってもらっても構わない」
年少であるアリアスが宴席を早くに抜けると、ヴェルハとフォゼラも護衛の役目を終える。その後、ガルエイドの執務室に呼ばれたのはフォゼラのみだ。言葉に窮しているガルエイドの気持ちは解る。
「断ればガルエイドさまが窮地に立たされるのでは。私でしたら、お気になさらず」
にっこり笑ってフォゼラが促すと、ガルエイドは明らかに驚きを張り付けた視線をフォゼラへ送った。
「アブレイズさまでしょう。私を夜伽にでも差し出せと? 構いませんよ。今更です。私は芸人です。所詮我らの身など、売り物のひとつに過ぎません」
「フォゼラ。だが、お前は今は」
さらりと言ったフォゼラだが、ガルエイドは納得がいかないようだ。
「ええ。雇われた傭兵でもある。だからこそ、今ここで騒動を起こす訳にはいかない。面倒はさっさと片付けてしまうに限る」
ニヤリと食えない笑みを浮かべたフォゼラに、ガルエイドは複雑な顔をしたまま提案を受け入れるしかなかった。
アブレイズは、与えられた部屋で、ベッドに腰を下ろして果実酒を含む。この地方の柑橘種から取れる濃い酒は、口当たりが良く甘いが、強い酒だ。
いい加減に酔いのまわった頭で、アブレイズはフォゼラの舞姿を思い浮かべていた。ゴツい身体つきの男なのに、あの舞姿のあでやかさはどうだ。柔らかな女の身体ではないことは承知しているが、寝所で乱れる姿が見たい。
共にいる相棒は男も見惚れるほどの美丈夫だ。もしかすると、あの男の手がついているのやもしれぬとも考えたが、それはそれで一興かとも思う。
「アブレイズさま。芸人が参りました」
「通せ」
扉を開いて入ってきたフォゼラは、頭から薄絹を纏ったままだ。
「お召しと伺いました」
臆することなくフォゼラはその場で片膝を付く。幾度もやったことだ。別段、特別なことでもない。
粘つくような視線は、まだ若く見目の良いころに浴びせられたものだ。姉仕込の妖艶な舞を舞う少年は、男とも女ともつかず見るものの劣情を煽った。だが、それは未だ成長しきっていない身体ゆえのこと。
「こちらへ来い。酌をしてもらおう」
「はい」
フォゼラは、舞うように歩く。まだ、ここは舞台の上だ。この男の前で妖艶な舞姫を演じきらねばならない。それがヴェルハがフォゼラにしか出来ないと与えた役割だ。
果実酒の入った小壷をとろうと腕を伸ばす。その腕を取られた。
「ふん。普通に男の身体だな」
「興が殺がれましたか」
柔らかくフォゼラが問いかけた。大丈夫だ、未だアブレイズの瞳には欲望の火が灯っている。
「いや、そういう奴がどう乱れるかに興味はある。それにこの身が何故にあのように美しく舞うかにもな」
ベッドへ組み敷かれ、ぱさりと薄絹が落ちた。だが、顕わになった容貌にもさして怯んだ風には見えない。
フォゼラは誘うように恥らうように視線を反らした。
男の手がフォゼラのシャツの胸元をはだけ、唇が肌の上を這う。そのまま片方の手がスラックスへと掛かるのに、フォゼラは腰を浮かせ素直に足を開いた。
「慣れておるな」
「小屋芸人でございましたので」
小屋掛けをする際に、その土地の有力者や領主に、芸人が袖の下と共に肉体を要求されるのはありふれた話だ。
「遠慮は要らんな」
最低限に肌を晒しただけの状態で押し入ってくるアブレイズに、フォゼラは苦痛の声を噛み殺す。
「あ、は、」
苦痛の中でも何とか快感を拾おうとするのは、身体に染み付いた防衛本能だ。内部を抉るように突き上げてくる男に、フォゼラの口元から演技ではない声が漏れる。
「感じておるのか。このような身体で」
「すみませぬ」
「良い。もっと乱れろ」
どうやら、アブレイズには気に入ってもらえたらしい。そのまま幾度も抱かれ、終わったのは夜が白みかける頃であった。
「何人の男に身体を開いた」
終わった後も、アブレイズはフォゼラを抱きこみ、中々離そうとはしない。
「芸人でございますれば。望まれるままに応じねばなりませぬ」
「好きでやっている訳ではないか。あの男とも寝ているのだろう?」
ちらりと瞳に走った嫉妬の色を、フォゼラは見逃さなかった。
「強く恐ろしい男でございます」
冷たい容貌とは異なる甘い声を持った歌い手であると同時に、冷徹で強い傭兵。血に塗れて歌う姿は、恐ろしくそして魅惑的だ。その姿はフォゼラを惹きつけてやまない。
「逆らえば何をされるか。御身を大事と思うなら」
上目使いで見上げたフォゼラをアブレイズは笑い飛ばした。
「可愛いことを言う。心配などいらんぞ。そのうち、お前もアリーも救い出してやる」
笑う男の背を眺めつつ、フォゼラは心のうちで笑いが止まらない。アリアスはおそらく救われたいなどと微塵も思っていないに違いない。この男にとってはフォゼラもアリアスも哀れな籠の鳥に見えるのだろう。
いい加減に眠い。フォゼラは欠伸をかみ殺すのに必死であった。
「フォゼラ。どうだ?」
「ろくな情報は無いぞ。一晩中演技してて疲れた」
部屋へ戻るなり、ごろりとフォゼラがベッドに転がる。その腹にヴェルハが頭を乗せた。
「別に情報が欲しい訳じゃない。奴は堕ちたか」
「ああ、もちろん。絶対に仕掛けてくる」
ニヤリとフォゼラが笑う。フォゼラが腕によりを掛けた姉仕込の舞だ。こんな体格になったが、その気になればまだ使える手だと解っただけでも良しとする。
「そうか。じゃあ、仕掛けさせるか」
ヴェルハが起き上がり、フォゼラを見下ろす。人の悪い顔になった己の相棒は一体何をたくらんでいるのか。
「いつまでもこんな場所で燻っているつもりは無いぞ。しかも、目的も正体も分からず護衛ときた。何時までだ?」
「それで、あっちから仕掛けさせる気か」
ヴェルハがうなずいた。
「今日は寝ていろ。俺はやることがある」
立ち上がるヴェルハをフォゼラは止めない。必要なら話す筈だ。今のフォゼラに必要なのは休息であった。

切りかかるエイセスの剣は軽く払われる。踏みとどまったエイセスは再び切りかかる。幾度も打ち下ろす剣は、全て軽く受け止められ払われた。
「足を止めるな。もっと踏み込め。剣に振り回されるな」
エイセスと対峙した男の長い黒髪が動きに合わせて軽く揺れる。そのことからも男はその場をほとんど動いていないのが解る。
「力任せ過ぎる。もっと相手の動きを見ろ。周囲にも目を配れ。乱戦になったら死ぬぞ」
ヴェルハは声を掛けつつ、剣を大きく払った。エイセスの顔が蒼白になる。喉元に突きつけられたヴェルハの長剣は、紙一重でエイセスの喉を切り裂く位置にあった。
エイセスの手から飛んだ剣は、弧を描き地面に突き立っている。
「へぇ。こりゃあ珍しい」
思わず声を上げたライジャを、アリアスが振り返った。勉学の時間が終わったアリアスを庭へと伴ってきたのだ。現在、アリアスには常に傭兵たちの誰かしらが付き従っている。
「ヴェルハが教えるのは珍しいことなのか」
疑問は少年らしい率直さで発される。この聡明な少年をライジャも気に入っていた。
「ああ。そんなところ殆ど見たことないね。昔、まだ子供だった頃にはあったが」
整った容姿故に舐められることの多かったヴェルハの、おそらくは示威行為だったのだろう。ライジャも随分ターゲットにされたものだ。
容赦なく何度も叩きのめされ、冷たい瞳で見下ろされる。今に見ていろとその当時のライジャは思ったが、己が実力も計れない子供だったのだと今ならば判る。
「あんたの側近にするつもりなのか。あの若造は」
傭兵たちはアリアスに敬語は使わないが、子ども扱いもしない。対等な相手として扱う。
「私がエイセスに見捨てられるようなことが無ければ」
「いい心持ちだな。あの若造、きっと強くなるぞ」
ライジャは素直にそう思う。いい主従だ。エイセスは主を守ろうとし、アリアスはエイセスに相応しい主であろうと務める。こういう主がいれば、ライジャも傭兵になどならなかったかもしれない。

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