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愛情こめて作ります<1> 

お料理男子と年上サラリーマンのCP。お邪魔なお料理男子溺愛兄とのコメディです。

【愛情こめて作ります】

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<10> <11> <12>完
番外<可愛くない・天使じゃない>
<未来の予感>

「うふふ。麻野さんってお兄さんでしょう?」
訳知り顔の女がそう言って麻野衛雪(あさのもりゆき)へと擦り寄ったのを見て、俺は内心頭を抱える。
よくある同僚主催の合コン。
顔も身体もちょっと良くて爽やか系な俺は、常どおりに人数合わせ&人寄せパンダとして呼ばれている。もちろん、目当ては俺よりも俺の友人。
学生時代からの友人である麻野は、背が高く誰もが認める男前。なお且つ仕事も出来るという、何処のチートだと思われるような男。男臭くはないが、かといって脆弱さや気弱さも感じさせない、絶妙な美形。十人中十人がおそらく美形だと認めると思う。
俺を呼ぶと麻野が付いてくるというくらいには仲がいい。じゃあ、何ゆえに頭を抱えたか。嫉妬や僻みなどでは決してない。はっきりと言う。俺は麻野が何処かの女とくっつくのは諸手を挙げて賛成。でないと一部の腐った女どもに、麻野と俺が出来ているなどと言う不名誉な噂を立てられ続けることになるからな。
問題なのはここで女が『お兄さん』などというワードを使ったこと。
世話好きで気の回る麻野は、長男気質だ。きっと兄弟の面倒を見ていたんだろうなというのはすぐに気付く。この女もきっと私は貴方のことをよく見てますよ、ってな感じで使ったんだろう。
「あ、判る?」
麻野がやに下がった。駄目だ、スイッチ入りました。
「判りますよ。いかにも、な感じじゃないですか」
「うん。うち親早くに死んで、兄弟二人だけだしね」
さらりと落とされた爆弾に、周囲が静まりかえる。さっきまで麻野に集まる女どもに苦い顔をしていた同僚もだ。
「あ。暗い顔すんなよ。弟と二人で結構楽しくやってんだから」
「でも、大変じゃないですか」
「毎日、どうされてるんですか」
気を取り直したらしい女たちが我も我もと話し掛ける。どうやら、家庭的アピールに切り替えたらしい。俺はそっと溜息を吐いた。
「朝も晩も弟が作ってくれる。洗濯も弟がやってくれる。俺はゴミ出しと日曜の布団干しと掃除当番。料理美味いよ。おにーちゃん、さゆちゃんの味噌汁があれば頑張れます」
男の二人暮らし。どうせコンビニ飯だろうと高を括った女たちの読みは外れた。
「男の子の料理って、興味あるなぁ。どんなの作ってくれるんですか」
「カレー美味いよ。ハンバーグは玉ねぎたっぷりだし。野菜炒めとか。時々だけどラーメン作ってくれる」
クスクスと笑いが起こる。あまりにオコサマメニューに呆れ半分、微笑ましさ半分といったところだ。横の男どもに目を向けると、笑い方で性質判断しているのが見て取れる。ま、当たり前だよな。出会いの場として合コンは利用するが、付き合うならば見映えよりも性格。嫁にするなら尚更だ。
「そんなのじゃ身体に悪いですよ。もっと野菜も取らないと」
「さゆのかぼちゃの煮付けや肉じゃがも美味いよな」
さゆちゃんの料理は完璧。美味いと褒めているこいつの舌がオコチャマなだけです。内心ムッとして言い放つ。ちょっと馬鹿にしたような女の口調が気に触った。
「へぇ、美味しそう。お料理上手な弟くんか。羨ましい」
馬鹿にしたような女の隣で、肉食系の女がストレートに本音を吐いた。それに引き気味だった男どもの好感は急上昇。清楚な振りで他所の弟馬鹿にするような輩なんかより、ずっといい。
「にいちゃんの口に合うかな。なんて首かしげて聞いてくる様はもう天使!」
あ、駄目だ。完璧にスイッチオン。後は弟がいかに可愛い天使か、ひたすらオンステージ。解散する頃には腰が引け気味な女たちと連絡先を交換する男どもと、弟の話をつまみに酔っ払った麻野を押し付けられた俺という、今日も通常パターンだ。

「さゆちゃん、開けてー。お兄ちゃん、重い」
足が立たない状況で、男の全体重を乗っけられれば、いくら俺が通常より逞しくても無理。
鍵を開ける音に、俺は少し身体を引く。
「すまん。美祢さん、また迷惑かけて」
顔を覗かせたのは背が高く俺と変わらないくらいの筋肉のついた男だ。丸い鼻とつぶらな瞳がごつくなりがちなその顔を可愛らしく見せていた。これがさゆこと砂雪。まったく似ていないが衛雪の血の繋がった実の弟である。
さゆは馴れたもので俺から衛雪を引き取ると、俵抱きで寝室へと向った。さゆ、相変わらず男らしいなお前。
「美祢さん、また兄ちゃん送ってきて変な噂立てられないか?」
「まぁ、いいよ。慣れてるからさ。それより、さゆちゃん可愛いオンステージだったから。さゆ、誕生日プレゼントに感激して抱きついたんだって?」
さゆがばっと勢い良く振り向いた。その顔は真っ赤だ。
「また兄ちゃん、しゃべったの?」
「あのオンステージは俺には止められません。ごめんね、さゆちゃん」
俺が頭を下げると、さゆは何もかも諦めたように深いため息を落とす。これは衛雪の病気だ。しかもトラウマ故のものだと俺もさゆも知ってるから、黙って諦めるしかないのだ。
「いいよ、学校の時みたいに皆が見物に来ることもないだろうし」
さゆのつぶやきは切実だった。
衛雪の母親が出て行ったのは、衛雪がまだ小学生の頃だ。父親は周囲の勧めでの見合いを渋っていたが、相手に衛雪が懐いたことで態度を軟化させた。何よりも前妻とは違う家庭的な雰囲気に惹かれたのだろう。
さゆの母親であるこの人は、美人ではなかったが何よりも暖かかった。その暖かな家庭が壊れたのは、数年後。出張から帰ってくる父親を迎えにいった帰りの交通事故だった。高校生になっていた衛雪を支えたのは、意外にも小学生だったさゆだ。
『兄ちゃんの役に立ちたい』と小さな手で料理を作る弟を、いじらしいと思わない兄はいない。そして、衛雪のさゆ馬鹿が始まるのだ。
今日はさゆがこれをしてくれたあれをしてくれた。さゆの料理は世界一。さゆちゃん可愛いよ。さゆちゃん。事あるごとに言う衛雪に、さゆに興味を持つ輩は当然出て来る。しかもうちの学校は小学校から大学までのエスカレーター。しかも何よりもさゆ優先となれば、付き合いたいという女の子にとっては目の上のたんこぶって奴だ。
興味本位の視線にさゆはぐったりしていた。しかも互いの母親にそっくりな二人はまったく似ていない。心無い噂話やいじめは日常だった。幸いなのはさゆが成長するにつれ体が大きくなったことだ。
「さゆちゃん。来週バースデーデートしよう。プレゼント買ってあるんだ」
「美祢さん。忘れてたんじゃ」
さゆの目が大きく見開かれる。
「いやぁ、当日は衛雪に譲らないと駄目でしょ。お兄ちゃん泣いちゃうよ」
さゆが誕生日当日に俺と出掛けてたなんて知ったら、あの男は本気で泣く。しかもいじけて後が面倒くさい。そのくらいにはさゆ可愛い病なんだよ。
「うん。来週ね。楽しみにしてる」
「お返しは、さゆの肉じゃがでいいから。家で待ち合わせして、出掛けよう」
街角で待ち合わせのドキドキもいいが、さゆは目立つのが嫌いだ。あの兄貴の所為ですっかり萎縮してしまっている。俺もそれなりには目立つ男だと思っているから、さゆと出掛けるときには家から一緒と決めていた。
「お返し指定なんだ」
さゆがくすりと笑った。うん、可愛い。内心でもだえながら必死で顔の筋肉を引きしめた。
「さゆはしてもらうだけは嫌いだろ」
目一杯格好つけてさゆの肩を引き寄せる。唇を重ねるのはまだ早い。緊張して引き結んださゆの唇に触れ合わせるだけのキスをして、俺はにっこりと微笑んだ。
「じゃ、来週な。待ってるから」
「うん。俺も」
さゆの顔が真っ赤になって、恥ずかしげに目線が下を向く。名残惜しいが衛雪が起きるとやっかいだ。俺はさゆの肩を叩いて、きびすを返した。
背後でぱたりと扉が閉まる。そうさゆと俺は誰にも内緒の恋人同士だった。

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