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愛情こめて作ります<3> 

展示会場を見ることなく、庭へと抜けると瀟洒なカフェがそこに鎮座していた。いかにもな蔓薔薇をまといつかせた門を潜りぬけ、庭へ面した場所を確保する。
「お勧めはランチコース。ちょっと早めだけど、大丈夫だよな」
ランチコースは、ステーキと魚のポワレと野菜の付け合せ。それにパンとスープ。デザートまでセットになったお得なセットだ。だが、いくらさゆが育ち盛りの高校生であっても朝飯の後に入るようなものじゃない。
「大丈夫。美弥さんが誘ってくれたってことは、美味しいもの食べさせてくれるってことだからな。腹はちゃんと空かせて来た」
悪戯っぽい表情で笑うさゆに、俺は眉を寄せた。さっき言ったばかりだ。
「さゆ?」
覗き込むように目を合わせた俺に、さゆははっと口を抑える。
「ごめん。柚木さん」
「よろしい。お詫びに今日は奢らせなさい」
「何だよ。それ、約束違うぞ」
すました顔の俺の言葉に、さゆが唇を尖らせた。子供の頃には素直に奢らせてくれたさゆだが、さすがに毎回となると遠慮をされる。特に恋人になってからは、メインは割り勘でと決まっていた。
「さゆが呼ばないのが悪い」
反論を許さずに、俺はウエイターを呼び止めるとオーダーを頼む。
「ランチセット。デザート付で。お飲み物は珈琲と紅茶のどちらを」
「俺は珈琲。さゆちゃんは?」
「俺も珈琲で」
綺麗な仕草でウエイターが去っていく。声が聞こえないくらいになると、再びさゆが反論を試みた。
「じゃ、柚木さんもちゃん付け止めろよ」
「駄目」
俺は即座に返答する。
「訳は話したよ。外ではちゃん付け。それで我慢しなさい」
実の兄弟の衛雪と出掛ける時ですら、怪訝な顔をされるさゆだ。社会人と高校生。カツアゲか援交を疑われても仕方がない。衛雪はまだいい。実際に兄弟でもあるし、あいつは『さゆちゃん。お兄ちゃんに何でも言ってごらん』とばかりに可愛がっている。姿はそう見えずとも、会話を聞けば、あまりの甘さと兄馬鹿にゲロ吐くこと請け合いだ。
だが、俺はといえば本当のことがばれれば、経緯はどうあれ確実に手が後ろへ回る身だ。正直、まだ手を出してないだけの状態である。
「さゆちゃん。俺を犯罪者にしたくないでしょ? 我慢してね」
言葉に詰まるさゆも可愛い。この子はホントに身体ばっかり大きくなって、男心がまったく解ってない。そんな可愛い顔してると襲っちゃいたい気分なんですけれど!
俺の忍耐など知らないウエイターがスープとパンを運んできて、可愛いさゆの目線は焼きたてのパンに釘付けだ。
「食べようか。さゆちゃん、せっかくの熱々だ」
「うん!」
焼きたてのパンのいい匂いがする。柔らかなパンをちぎって口に運んださゆの顔がほっこりと綻ぶ。このさゆの幸せそうな顔が好きだ。
二人して目を見合わせる。俺もきっと幸せな顔をしていると自覚があった。

カフェを出て、庭園をぶらぶらと歩く。せっかく来たんだ。腹ごなしも兼ねての庭園散歩。立派なデートです。明治から残る木造の洋館はかなりのお屋敷だったようで庭も和洋折衷の広い庭だ。そこここに離れや茶室が残り、中を見学したり出来る。別に興味があったりする訳ではなくとも、古い建物というのは何処かワクワクする。
特に、今日は展示物が武具とあってか、男性のグループもそこそこいた。悪目立ちもせず、ゆっくりと散策を楽しむ。
玉砂利を敷いた庭に、足を取られがちなさゆに俺が手を伸ばす。繋いだ形になった手にさゆが頬を染めた。本当に可愛い。俺も衛雪を笑えない。一瞬後、我に返ったさゆに指が振りほどかれた。理性ではいけないことだと解っていても、感情が付いていかない。拒否された気分で指を見つめていた俺に、さゆが沈んだ声を掛けた。
「ごめん。でも、俺」
口篭るその先は解ってる。さゆは目立つこと好奇の視線を受けることが嫌いだ。男同士で手を繋ぐなど以ての外。
「ごめんね、さゆちゃん」
悪いのは俺の方だ。浮かれ過ぎてる。さゆちゃんのバースディデートなのに気詰まりにさせてどうする。
「さゆちゃんとのお出掛け。楽しすぎるから、色々忘れちゃう」
「ゆ、うきさん」
俺の本音交じりの言葉にさゆは頬を赤らめて目を伏せた。
「さ、さゆちゃん。まだまだ回ってないところがあるよ。それから、お茶ね。美味しいパンケーキのお店を見つけました!」
「うん。ありがとう。柚木さん」
おどける俺に、さゆちゃんの笑顔が眩しい。気を使わせてますね。俺、だらしないなぁ。さゆの頼りがいのある大人の男でいたいけれど、そこまで余裕もない。でも、精一杯格好はつけたいじゃないですか。
俺は、にっこりと笑顔を浮かべた。さゆの気遣い、受け止めてやろう。
「パンケーキとフレンチトーストの店。ホイップクリームと果物がたくさん乗ってて、すごく可愛いよ」
「可愛いんだ」
さゆちゃんは大きな身体の割りに、可愛いものが大好きだ。でも、似合わないのは自覚済なので、プレゼントには不向き。地雷を踏みぬく覚悟が必要です。これをうっかり踏み抜いちゃうのが、主に兄である衛雪なところが問題なんだよな。
あいつ、さゆちゃん可愛いフィルター標準装備だからさ。
フリフリのエプロンとか、可愛らしいぬいぐるみキーホルダーとか、お花のバッグチャームとか。何処の女子だ。しかも身に付けるものばかりって、どんな拷問だよ。
可愛いさゆちゃんは高校生男子ですよ?
可愛らしいものは眺めるものなのだ。なので、俺は結構デートの際には可愛らしいお店に入る。俺が主導権を持てば、さゆは付き合わされている風にしか見えないだろう。
庭を思うさま散策し、カフェの横を抜ける頃には、カフェにはかなりの人数が並んでいた。お値段手ごろで美味いなら当然だよな。最初に入って良かった。
二つ先の駅前にあるパンケーキの店は中二階。
昼を過ぎたあたりで、ちょうど席が空いていた。窓際の日当たりのいい席で俺は奥にさゆを座らせ、入り口を背にして腰を下ろす。
この店は、一階が半地下で中二階という造りの所為か、道路から結構見える。なので俺としては道路から見えない位置にさゆを回したつもりだった訳だ。
ところがこの位置が不味かった。
メニューに目を落としていたさゆが俺を伺う。その瞳が目一杯に見開かれた。
「さゆちゃん?」
「さゆちゃん、友達かい」
背後から掛かった聞き覚えのあり過ぎる声に、俺は一瞬のうちに固まった。
「に、兄ちゃん。あの」
腰を浮かして立ち上がり掛けたさゆの腕を掴む。さゆ、そんなに怯えるとバレるよ。
「何だ、衛雪か」
覚悟を決めて振り返る。そこにいたのは、麻野衛雪。言わずと知れたさゆちゃんの兄貴だった。

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