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愛情こめて作ります<4> 

「何でお前が」
「さゆちゃん、この間誕生日だったんだろ。お祝いだよ」
俺はなるべく平静に言葉を紡ぐ。
「お前が?」
「今までもお祝いしてたよ。な、さゆちゃん」
「う、うん。そう」
さゆの視線は泳ぎまくっている。背中に痛いくらいの衛雪の視線を感じるが、そこは綺麗に無視した。
「お茶して買い物行ったら帰すよ、保護者」
「ちゃんと夕飯までは帰るから。兄ちゃん、心配しないで」
背後からどす黒いオーラを撒き散らす衛雪に、俺は呆れたような溜息を吐く。それに何とか持ち直したさゆちゃんが乗っかった。でもねさゆちゃん、衛雪が心配しているのはそこじゃないよ。
俺は態と見ないフリをしているが、さゆは本当に解ってないんだろう。衛雪の心配は妙な虫がさゆに付くことなのだ。
女はもちろん、この年の男の子ならば、普通に猥談くらいはするだろう。こいつはそれすら許せないと言い切る訳だ。衛雪にとってさゆは天使。そこは動かない。
「俺も一緒に行ってもいいか」
「別にいいけど、お前には構わないぞ。さゆちゃんはいいかい」
ここで断ったら、非常に面倒くさい。公衆の面前での泣き落としとか勘弁してください。第一、さゆちゃんのHPが削られまくりだ。無論俺も。
「う、うん」
うなずきはしたものの、己の兄がいかに注目を集めるか、身に沁みているさゆは非常に嫌そうだ。
「さゆちゃん。お兄ちゃん、嫌い?」
「そんなことない!」
半泣きの衛雪に、大慌てのさゆが首を振る。叫んださゆの声は店中に響き渡った。
「とりあえず、座れ。迷惑だ」
「お前に言われる筋合い無いな」
周囲の注目を集めてしまったことに気付いたさゆは半ば血の気が引いている。これ以上は不味いと俺はすぐに衛雪をさゆの隣へと促した。いつも通りのやりとりだが、男にしては中性的に整った顔を歪めた衛雪は、腐った女どもに云わせると『ツンデレ乙』という奴らしく、これはここにいる間はネタにされるなと諦める。
どうせなら、さゆちゃんと。と考えて、いやいや駄目だろとセルフ突っ込み。注目が嫌いなさゆちゃんに負担を掛けてはいけません。それに頭の中だけだとしてもさゆちゃんが穢れてしまう。
「さゆちゃんは何にする? お兄ちゃん、何でも奢ってあげるよ」
「すみませーん。フルーツトーストセットを二つ。衛雪は何だ?」
さゆにお伺いを立てる衛雪を遮ってオーダーしたのは、さゆちゃんに食べさせようと思ってたフルーツ山盛りのフレンチトーストだ。さゆちゃんが選ばなかったら、二人で半分こにしようと思っていたのに衛雪の所為で台無しだ。
「おい、さゆには選ばせないのかよ」
「兄ちゃん、柚木さんは俺に食べさせたいと思って連れてきてくれたんだよ」
怒りを滲ませた声の衛雪に、さゆが言い添える。大丈夫だよ、さゆちゃん。俺も君のお兄ちゃんとは付き合い長いから。
「さゆちゃんはそれでいいの?」
こくりとうなずくさゆに、衛雪はデレデレだ。言葉に詰まるとさゆはうなずくか首を振るかになる。
「じゃ、俺も同じのを」
さゆと同じなら何でもいいらしい。落ち着いたらしい衛雪は、改めて俺に向って身を乗り出した。
「お前、さゆとよく出掛けてるの」
「まぁな。お前妙にさゆちゃんに過保護だからな。さゆちゃんも息が詰まるだろうよ。さゆちゃんに変な奴が近づくのも嫌だろう」
そのもっとも警戒対象レベルマックスの俺が言うことじゃないけれどね。案の定衛雪は俺に胡乱な視線を投げるが、その場で俺を排除するほどでは無かったらしく、三人でお茶をすることになった。
「うわぁ」
さゆが歓声を上げる。薄めのフレンチトーストの横に、山盛りの生クリームとトッピングされた様々なフルーツ。アイスティーはいい匂いのするフレーバーティ。綺麗な器に可愛らしく盛り付けられたそれにさゆは目を輝かせている。
「俺のお勧め」
目配せした俺に、さゆはさっそくフォークを手に取った。生クリームごとフルーツをトーストに乗せ、一口頬張る。
「美味しい。ホントだ、この生クリーム甘くない」
顔を輝かせたさゆに、俺は微笑んだ。隣の身もだえしている不審者は放っておこう。
「だろ。結構ぺろりと入る」
甘いフレンチトーストに生クリームとフルーツの酸味が見事にマッチしてる。うん、いい笑顔だ。連れてきて良かった。隣で息も絶え絶えな不審者は以下同文。
「ナニ、何でさゆちゃんこんなに可愛いの。俺の弟天使。尊い」
ぶつぶつ言っている兄の台詞を聞き取れなかったらしいさゆちゃんは、かなり引き気味だ。俺も慣れているから切れ切れに何をつぶやいているか聞き取れるだけで、若干引いている。弟可愛いのは判ってるけど、かなり不気味。
「さっさと食えよー、置いて行くぞ」
言葉だけ掛けるが、正気に戻らないのなら置いていけばいい。正直、こいつを連れてさゆと買い物なんて、気が重いどころの話じゃない。
ところが、俺の言葉に衛雪はがばりと起き上がった。
「二人だけでなんて駄目に決まってるだろう。可愛いさゆちゃんを見損なうなんて!」
がつがつと食べ始める衛雪に、俺とさゆがげんなりとした顔を見合わせる。この残念きわまるブラコンに付ける薬は未だに開発されていない。
仕方なく衛雪の分も払って、俺たちが来たのは近くのショッピングモールだ。二階にある雑貨屋はバッグや傘などの日常小物を扱う店だった。
二人の男を連れた高校生の姿は、ちょっと目を引いたようで、周囲の視線が集まるのを感じる。俺はそれとなくさゆを視線から遮った。
「さゆちゃん、どれにする? 俺のお勧めでいいかな」
さゆが欲しがっていたのは、通学用のバッグだ。留め金が甘くてよく外れるようになったと言う。只でさえ長身でガタイのいいさゆがバッグを取り落とすなど目だって仕様がない。
俺が選んだのは、ちょっと皮風に見えるダークブルーのショルダーバッグだ。軽くて丈夫だがお値段はとても高校生に買えるような金額じゃない。だが、社会人なら普通使いにしてもおかしくは無い程度だ。
「これ、いいな」
そして、さゆが選んだのもやはりそれだった。うん、俺の目に狂いは無いね。
さゆちゃんが手に取ったショルダーを受け取り、俺がレジへと向うと肩を突かれた。
「俺が払う」
ぶっきらぼうな声を上げ、俺からバッグを奪おうとする衛雪の腕を交わす。
「おい、さゆちゃんのなんだろ。何でお前が払うワケ?」
「だから、誕生日プレゼントだって。お前はもう贈っただろう」
現実派のさゆちゃんが貰って嬉しいものは、普段使えるものなのだ。なので、さゆちゃんへのプレゼントは内緒の驚きよりもさゆちゃんが気に入るもの優先。必ず一緒に選びます。
何となく納得しかねたのか、衛雪はさゆちゃんに向き直った。
「さゆちゃん、他に欲しいものないの? お兄ちゃん、何でも買ってあげるよ」
これ、さゆちゃんに似合うかなと異様に可愛らしい靴を選んでいるのを見て、さゆはびっくりしている。
「に、兄ちゃん、俺、兄ちゃんからはもう貰ったじゃん」
「誕生日プレゼントはね。ほら、進級祝いがまだじゃないか」
それはとっくに終わってます。と心のうちで突っ込みを入れた。さゆ、そこは諦めろ。何か貢がせろ。そうしないと終わらないぞ。
「柚木さん、兄ちゃん止めてよ。友達でしょ」
「さゆちゃん、スニーカー欲しがってただろう。あれ、貢がせろよ」
「さゆちゃん、スニーカー欲しいの?」
慌てるさゆだが、甘いぞ。お前の兄の性格はお前が一番に判っている筈だ。適当に流せないのなら、さっさと安い貢物で手を打っておけ。めんどくせぇ!

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