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愛情こめて作ります<5> 

「どれがいい? こっちのとか可愛いよね」
あくまで可愛い系に流れようとする衛雪に、俺は横からさゆの好みを吹き込んでおく。
「軽くて丈夫で履きやすい。かつ、カッコいい奴だろ」
こくりとうなずくさゆを見た衛雪がふるふると震え、自分を抱きしめた。あ、これ駄目だ。発作が出た。
「さゆちゃん、可愛い~~~~。何なの、俺の弟、天使なの?」
店の真ん中で叫ぶ衛雪に、見とれていた視線が一斉に逸らされる。俺もそっとさゆを促して、スニーカー片手にレジ前へと移動した。
さゆは真っ赤になってうつむいている。レジを打つ店員は苦笑いを殺そうとして失敗していた。豆腐メンタルなら軽く死ねる。
「おい、お前が払ってどうするんだよ」
背後から肩を掴んで引き戻された。いつの間にか正気に戻った衛雪にガンつけられる。
「発作収まったか」
「は?」
「俺の弟天使病の発作。家の中だけにしておけよ」
さっと引き下がる俺を、さゆが恨めしげな視線で睨むが、仕方ないでしょう。さゆちゃんのお兄ちゃんの面倒臭さは異常です。
「俺の弟が天使なのは事実だ」
言い切る衛雪に、さゆはますます真っ赤になって震えている。耐えろ、さゆ。
支払いを終え店を出ると、さゆの肩を衛雪が抱いた。
「じゃ、ありがとうな。ほら、さゆちゃんもお礼言って」
衛雪の行動に固まったさゆは、何とか口を開こうとするが、あわあわと口篭るばかりで可哀そうなくらいだ。要は邪魔だから早く帰れという訳だ。
「ああ。いいよ。俺がやりたかっただけだし。また保護者の入らない場所でデートしようぜ」
俺はさゆちゃんに手を振ると、いさぎよく背を向ける。名残惜しいがこれ以上はさゆを困らせることにしかならない。
「誰がさせるか!」
はき捨てるような衛雪の台詞はもはやデフォルトだ。さゆが可愛くて仕方がないのは判るが、ああやって周囲に誰も寄せ付けない。
只でさえさゆは、麻野家の家事全般を引き受けている所為で時間の自由が利かないのに、兄の鉄壁のディフェンスに阻まれているとあれば、より一層周囲から人は引いていく。
「まぁ、そのお陰で俺が付け込む隙を作ってるんだから、馬鹿だよな」
兄の束縛を鬱陶しく思いながらも、兄の心情を思って拒否出来ないさゆ。すがるような視線が心地いいなんて、ね。俺も終わってる。
薄い笑いが自然と口元に浮かんだ。

「ひどいよ。柚木さん」
電話の向こうでさゆがむくれている。顔は見えないが、声で判る。きっとタオルケットを頭から被って壁際で座り込んでいるに違いない。
「見捨てて帰るなんて。あの後兄ちゃんと一緒にスーパー行ったんだぞ。どれだけ羞恥プレイだよ」
うわ、兄とは言え、男に肩を抱かれたままで近所のスーパーに買い物。確かに羞恥プレイだ。
「ごめんよ、さゆちゃん。でも、あれ以上さゆちゃんと衛雪の邪魔すると、出掛けるのもヤバくなるから」
「解ってるよ。奴当たりなんだから」
さゆちゃんのデレが痛い。何だろう、良心をちくちくと針で刺されている気がする。ごめんね、さゆ。俺も君の兄ちゃんと同類です。
「さゆちゃん。またデートしよう」
「うん! でもまた兄ちゃんに見つかると面倒臭いから、柚木さんの家でいいや。材料持ってくるから、何か作るよ」
さゆ、お前は俺を試しているのか。お家デートなんて、手を出さない自信ありません。
「何がいい? 肉じゃがと茄子の煮浸しと大根なますと。今日行ったカフェのフレンチトースト作ろうか。あれなら作れそう」
嬉々としているさゆちゃんの声すら興奮材料です。ありがとうございます。
「さゆちゃん、それはいいけれど、別れた後、衛雪機嫌悪くなかった?」
下半身が血流良くなったのを感じて、俺は慌てて話題を変えた。うん、衛雪の顔を思い浮かべた途端に頭が冷えたよ。
「兄ちゃん?」
「いや、機嫌悪くなる前には引いたつもりだけど、さ。あいつさゆちゃんのことだと警戒ハンパ無いからね」
「ああ」
さゆちゃんが舌打ちをしたのが耳元で響く。
「いーじゃん。兄ちゃんが何言っても。俺だって高校生なんだし、いい加減にしろって」
イライラと話すさゆの声にはかなり棘が含まれている。ははぁ、これは何かあったな。
「さゆ。何があったんだ。話してごらん」
「馬鹿みたいなことだよ。もう柚木さんと出掛けるなって。遊ぶのも買い物もカフェめぐりも兄ちゃんが付き合うってさ」
「バレたのか?」
警戒されたか、それとも感づかれたかとさゆの言葉を待つ。
「兄ちゃんがそんなにマトモだったら苦労しないよ。俺もそう言い出した時には、『ヤバい、柚木さんとのこと、バレた』って思ったもん」
重い溜息を吐き出したさゆが話した事の顛末は、いかにも衛雪らしいもので、俺はさゆと溜息を合唱する羽目になった。

「何で美弥は知ってるの? お兄ちゃん、さゆちゃんがスイーツ好きなんて知らないよ?」
さゆに詰め寄る衛雪に、さゆの思考はオーバーヒート寸前だ。内心では『え? そこ???』と思ったが、懸命にも口には出さなかった。
美弥とは絶対に出掛けるな。とシリアスモードで振り向いた後の台詞がこうなるとは誰も予測出来なかった筈だ。
「美弥とは何度出掛けたの? 駄目だからね。今度はお兄ちゃんと出掛けてね」
「いや、あの」
「さゆちゃんがスイーツを頬張る可愛い顔は俺だけが知ってればいいんだ!!」
弾丸のようにしゃべり続ける衛雪に対抗する術は砂雪にはまったく無かった。

「親友を取られる小学生か」
「もしくは母親を弟に取られた幼児」
俺の感想に返されたさゆの突っ込みは非常に的確だ。さゆ馬鹿につける薬は無い。
「いっそ、そんなこと言う兄ちゃん嫌いだっていっちゃえばいいんだろうけど」
「さゆ!」
俺の鋭い声にさゆが黙った。怒られたと思ったのかもしれない。
「さゆちゃん。そんなことしてみろ、衛雪の奴、もっと面倒臭くなるぞ。毎日学校前で待ち伏せされたらどうする?」
「まさか」
軽く流したさゆだが、俺は本気だ。
「え? まさかだよね。本気でやらないよね? ね、柚木さん」
「今すぐにはな。さゆちゃんと一緒にいたいからって仕事変えるかもしれない。あいつのさゆ馬鹿を甘く見るな」
トラウマに端を欲した弟馬鹿だ。弟が自分から離れるくらいならまだしも、弟に嫌われたなどとなったら、何で嫌われるのかと突っ走ることは間違いない。
「せめてもう少し」
重い溜息を吐いたさゆの続く言葉は知ってる。だが、あいつの思考回路を利用している俺としては、さゆに真実を告げる気は無かった。
「さゆちゃん、週末に会うのは止めよう。俺にいい考えがあるんだ」

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