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愛情こめて作ります<6> 

翌日、さゆと待ち合わせたのは、俺と衛雪の母校でもある高校裏にある神社だ。俺の弟天使病の衛雪とさゆに落ちた自覚のあった俺の二人が別ルートで見つけた好条件の勤め先である会社から何時でも駆けつけられる範囲だ。
「こんな時間に抜けてきて大丈夫?」
時間は昼休み。外食の連中は出払う時間だし、衛雪は愛妻ならぬ愛弟弁当なので出逢う危険もない。
「大丈夫だよ。隣の駅だし、ほとんど皆駅ビルで昼飯食うしね」
会っても問題ない、と胸を張る。殆どの連中は駅ビルか駅の屋上で飯を食っていた。それに誰の目もない場所で二人きりになる程、俺の理性は鋼鉄製じゃない。
座ったベンチに、さゆが弁当を広げる。デカイ二段重ねの重箱に入れられたのは、小さめのお握りがいくつかとお新香。二つ目が豚バラと根菜の煮物、卵焼き、肉巻きアスパラ、大根なますが並ぶ、さゆちゃん渾身の弁当だ。
「美味そう。さゆちゃん、卵焼きは何入っている?」
「今日は明太子」
満面のドヤ顔のさゆは凶悪に可愛い! お~、力作ですね、知ってた!
笑うさゆちゃんのほっぺたに買ってきた缶珈琲を押し付ける。
「ひゃいっ」
予想してなかった反応と上がった可愛らしい声に、俺はびくりと身体を竦ませた。
「駄目だ、駄目。ここは外、ここは外」
呪文のように唱えて顔を上げると、ジト目でこちらを見るさゆと目線が合う。
「ごめん。さゆちゃん」
衛雪と同じさゆちゃん可愛い病を発症している自覚はあるが、トラウマを抱えたさゆに見せていい姿じゃない。
「ううん、俺こそ。デカイ男のこんな反応気持ち悪いよね」
シュンと沈むさゆちゃんに俺は慌てて首を振った。
「そんなことない!」
俺のデカイ声に、さゆちゃんがびっくりした顔で目を見開く。丸い瞳が真っ直ぐに俺を見た。その視線に俺の唇は震え、言いたい言葉が喉の奥で詰まる。
その姿を見たさゆの瞳がびっくりしたものから段々と柔らくなっていった。
「うん。ありがとう」
さゆは俺の気持ちを真っ直ぐに疑うことなく受け取ってくれる。
「食べようか。昼休みなくなっちゃうよ」
「そうだな。せっかく二人でいられる時間だしな」
お握りを一つ手に取り口に入れると、ごましおの香りが広がった。うん、美味しい。
「美味いよ。さすがはさゆちゃん」
それを確認して、さゆちゃんの顔が嬉しそうに輝く。それから自分もお握りを口に入れた。二人して神社の石で出来たベンチに腰を下ろし、弁当を広げる。幸い、屋根もあり、雨でも濡れることは無い。週末に会えないことを埋めるようなランチデートは幸せな時間だった。

「あれ。何かあったのか」
営業先から戻ってくると、ちょうど衛雪が部長に頭を下げている所だった。隣の席の同僚にそっと囁く。
「さぁ、さっき電話が入ってたけど」
どうやら退社の許可を貰っているらしい衛雪に、俺は嫌な予想が頭を掠めた。衛雪の身内はさゆだけだ。
頭を下げ、周囲に声を掛けた辺りで俺が帰ってきているのに気付いた衛雪が走り寄ってくる。
「さゆは?」
「後で連絡入れる。ヘルプ頼むかもしれん」
「いや、そっち帰りに寄るわ。さゆ、心配だし」
どうやら怪我をしたとかでは無さそうだが、真面目なさゆのことで呼び出しなんて、只事じゃない。お互いに励ますように肩を軽く叩きあい退社する衛雪の背中を見送った。
「何があったんだ」
「さぁな」
訪ねてくる同僚の疑問には俺も答える術が無い。とりあえず、仕事だと頭を切り替え、取引先のトラブルの報告をするため、部長へ歩み寄った。
今はさゆのことは考えない。
仕事を放り出す男などさゆには要らないだろうから。

仕事を終えた俺がさゆと衛雪の暮らすマンションにやってきたのは、衛雪が抜けた分の仕事の穴埋めを済ませた後だった。
呼び鈴を鳴らすと、さゆが不機嫌な顔のままドアを開く。
「さゆちゃん?」
俺によく見せる拗ねたような表情ではない。むすりと不機嫌を顕わにした顔は、俺に対して初めて見せる顔だ。いじめっこや喧嘩相手を前にした時に見た事のある目つきの悪さを際だだせるような顔。
「入って」
言葉も短い。これはあれだ、ホントに衛雪と喧嘩になってるな。
「兄ちゃん、柚木さん来たよ」
ぶっきらぼうに言ってどかりと衛雪の前のソファに腰を下ろした。俺はどちらに座ろうか迷ったが、とりあえず何かあった時の為に衛雪の隣へと陣取る。これだと大人二人に叱られる子供の図だが、衛雪の心情的にはこの図を取らざるを得ない。
「で、何があったか説明してくれるんだよな」
「う、まぁな」
衛雪に向き直ると、渋々といった体で言葉を濁す。
「俺が援交やってるんじゃないかって呼び出し食らったんだよ。兄ちゃんは」
「はぁ?」
何だ、ソレ。投げ込まれた爆弾に、俺はまじまじと衛雪の顔を眺めるだけだ。
「まさかとは思うが、お前それ信じちゃったワケ」
この、弟マジ天使な男が?? 俺の軽蔑の視線に、衛雪がプルプルと首を振る。まぁ、そうだよな。じゃ、さゆは何で怒ってるんだ?
「元々、俺が付き合い悪かったのが原因なんだけどさ。柚木さんと出掛けてんの何度か見られてるらしくて。それだけなら、俺がホモって話で済んだんだよ。ところがこの間、他の男に肩抱かれてる。しかも翌日には持ち物が変わってると。女って怖いよ。良く見てんな。数日たった頃には俺が身体売ってるって話が回ってたらしい。きちんと証拠のある話でもないんだし、単なる噂で流してくれれば良かったのに、栄えある伝説の生徒会長サマの弟だし未然に防ごうって話になったんだと。これ悪いの誰?」
一気にここまで怒涛の如く発言したさゆがじろりと衛雪を見下ろす。駄目だ。これ、俺がいくら気を付けたところで衛雪で台無しだ。
「で、でもね、さゆちゃん」
「何? 兄ちゃん」
可愛い弟に喧嘩相手のように見下ろされて衛雪がびくりと竦む。
「さゆちゃんも美弥と出掛けたりしなければ、俺が第二の男になることは無かったんじゃないかな~なんて」
今度は衛雪が拗ねた顔になった。そういう表情はさゆと似ている。
「兄ちゃんが肩を抱いたりしなければ、そんな噂は立ちませんでした!」
兄の精一杯の反論をさゆはすっぱりと切り捨てた。衛雪、頑張れ。俺は応援するだけだけどな。
「これに懲りたら、もう俺に必要以上にベタベタしないでよ」
すっと立ち上がるさゆに掛ける言葉もなく、衛雪はがっくりとうなだれた。
「さゆちゃぁん。お兄ちゃんはさゆちゃんが大事なのにぃ」
「いい加減にそのさゆフェチを卒業しろ」
がっくりとうなだれた衛雪の肩をぽんぽんと慰めるように叩いて、俺はさゆの後を追った。このままここにいると衛雪に自棄酒付き合わされる。

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