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愛情こめて作ります<10> 

「じゃあ、今度家に来るか?」
「いいの?」
現在、俺は家からそう離れていないアパートで一人暮らしだ。実家の頃は結構家に来ていたさゆは、一人暮らしになっても遊びに来たがったが、ストッパーの無い家に招くほど枯れて無い。さゆが子供ならばまだ自制が効いたかもしれないが、高校生にもなれば自然と『もういいだろう』なんて意識も働く。
「いいよ。教えてあげるよ」
「おい。そんなの許さないからな。さゆちゃん、こんな男の家なんて駄目だ。食われたらどうするんだ」
まぁ、衛雪ならそう言うよな。でも、そこは承知の上です。むしろ、保護者付なら、今まで遠慮してた色々を試せる。
だが。
「兄ちゃん、下種な想像止めてよ」
衛雪の言葉をしっかりと理解した上で、さゆが衛雪に釘を刺す。
「ごめん。さゆちゃん、俺も男だからさ。そこは衛雪を責めてやるなよ」
でも、さすがに罪悪感が勝ります。素直に謝るよ。ごめんね、さゆちゃん。さゆちゃんの可愛さにふら付かない自信ないわ。
しばし、黙ったさゆちゃんは俺をじと目で見つめた後、見る見るうちに赤くなった。それこそ耳まで。
「嘘でもいいから、そんなこと考えてないっていうところじゃないの」
「いや、そこは正直になっとくべきだろう」
油断されては俺が困る。主に下半身がですが。
「ほら、さゆちゃん、こっち」
がばりと抱きついた衛雪が俺から引き剥がそうとするが、その頭をさゆちゃんがひっぱたく。
「もう、兄ちゃん。デリカシー無いよ」
ええ~~と、どういう意味かな。俺になら何されてもいいって意味にとってもいいんでしょうか。お兄ちゃん、邪魔。せっかくいいところだったのに??
「ひどいよ。さゆちゃん。さゆちゃんは俺よりも美弥がいいの?」
「そこ、比べるとこじゃないから!」
衛雪とさゆの攻防は続いているが、俺はひたすら傍観するのみだ。心情としてはさゆに応援したいが、未だ戦う理性は衛雪に軍配を上げたい。
そんな理性的な男じゃないよ。俺は。
「とにかく、駄目。絶対に駄目」
「なら、お前も来れば?」
首をはげしく振って拒否を示す衛雪ががくがくとさゆを揺さぶっている。
「そう、それならオッケーって、美弥?」
「正直、俺も自分の理性に責任持てない。お前が目を光らせてりゃいいだろ」
俺の提案に、はっと振り向いた衛雪はキラキラさせた瞳で、さゆちゃんを見た。
「兄ちゃん、キモイ」
最近、兄に対しては何処までも塩対応のさゆがばっさりと切り捨てる。うん、国宝級の切れ味だね。
「くっ、さゆちゃん。お兄ちゃん諦めないよ」
「勝手にすれば」
胸の痛みに耐えつつ、立ち上がる衛雪に、さゆちゃんは本気で冷たかった。

「作り方はジャム作るときと一緒だよ。でもりんごは薄切りにするだけね」
「はーい」
週末。二人揃って訪ねてきた兄弟を部屋へ招き、ワンルームのキッチンへ二人で立つ。さゆと俺はお揃いの黒いカフェエプロンをつけていた。
お邪魔虫・衛雪は対面キッチンの向かい側にあるテーブルへ腰掛けている。
コップ一杯分の砂糖をスライスしたりんごへかけ、その合間に遅い朝食を作ることにした。
キャベツの千切りはさゆに任せて、俺はマッシュポテトを作る。お湯とマッシュポテトの元と牛乳を混ぜるだけの簡単なお仕事です。
「柚木さん千切り終わった」
「あ、それ塩昆布と混ぜてくれる?」
はい、こちらも簡単サラダです。キャベツは多めで。その方が美味しい。お好みでレモンかカボスをどうぞ。ちな、俺は普段はスーパーかコンビニの千切りされているキャベツを使います。
「柚木さん、卵はどうする?」
「ひき肉と混ぜ合わせて。半々で」
ひき肉が多ければハンバーグ風になるし、卵が多ければ、卵焼きだ。どっちにも寄らないくらいが俺のお好み。まぁ、一人暮らしの飯ですから、創作簡単料理で充分。さゆはさすがに手馴れていて、綺麗な形のオムレツを作っていた。
「レタスちぎって、さっきの混ぜ合わせたキャベツとマッシュポテト添えて」
「へぇ。簡単だけどすごくボリュームあるね」
「まぁ、男料理だからな」
胸を張る俺に、さゆが尊敬の視線を向ける。照れるよ、さゆちゃん。
「トマトスライスして」
「はい」
厚切りのトーストにバターを塗って、とろけるチーズとスライスしたトマトを乗せた。三人分トーストすれば出来上がりだ。
「ちょっとトイレ」
衛雪がさすがに馬鹿ばかしくなったのか、席を外し、トイレへと向う。その姿を見送っていると、隣から大きなため息が聞こえた。
「さすがに疲れた?」
「あの、兄ちゃんにね」
兄ちゃんと苦々しく言うさゆは、何処かイラついているように見える。何か不味かっただろうかと、俺はさゆを覗き込んだ。
「さゆ。何があったんだ」
「何でもないよ」
俺にさゆは明らかにほっとしたように肩の力を抜く。これはアレだ。さゆがダシにされたときに見せる顔だ。今度は誰だ。同じ学校の連中だろうか。
「さゆ。俺は絶対にさゆの味方だ」
しつこく聞きただすことはしないし、必要も無い。さゆだけを見ていると示せばいい。
「うん。知ってる」
そっとさゆを引き寄せた。さゆの背中をあやすように叩いていると、さゆフェチの衛雪の声がやかましくがなりたてる。
「あ~~。さゆちゃんへのセクハラ禁止ぃ!」
「何がセクハラだ。恋人同士の抱擁ぐらい甘く見やがれ!」
「さゆちゃん、簡単に触らせちゃ駄目だよ。どんどんエスカレートして、気がついたらこの狼に食べられちゃうんだからね!」
衛雪が半泣きで訴えてくるのを乾いた笑いで見ているさゆちゃんの瞳は、『駄目だ、この男』と兄に対して何度目かの可哀そうな人を見る目になっていた。
朝食を取って、珈琲まで飲んでから再びキッチンに立つ。一時間半くらいの時間砂糖に漬けたりんごは自らの水分に浸かった状態になっている。
それを鍋に移して、すこしづつかき混ぜながら弱火で煮詰めると、りんごの甘煮が出来上がる。
「スライスした奴、餃子の皮の中央に並べて」
「あ、判った。これで包んでトースターで焼くだけだ」
「そ。変わり餃子みたいに包み込んでもいいし、俺がやったみたいに桜餅風にくるむだけでもいい。春巻きの皮で長細く包んでもいいよね」
「もっと大量にりんご使って、残った奴はトーストに乗せても美味しそう」
はしゃぐさゆちゃんはすごく可愛いし、幸せそうな表情をしている。昔から二人で料理を作る時間が好きなのは、このさゆちゃんの顔を見たい所為かもしれない。
それが曇っていくことをこのときの俺は考えもしなかったのだ。

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