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可愛くない・天使じゃない<愛情こめて作ります>番外 

「佐雪」
背後から呼ばれて振り返ると、そこには姉譲りの整った顔立ちの友人がいた。
「何だ。田島か」
「飯行こうぜ」
確かに今は昼時だが、いいのか。お前の背後に弁当持った女が数人いるような気がするんだが。
「お前のことだから、俺の分まで弁当あんだろ」
「いや、別にお前の分ってわけじゃ」
子供の頃からの癖でつい多く作りすぎてしまうのだが、それはブラコン兄貴や幼い俺の面倒を見てくれた兄貴の友人・柚木さんの分であって、決してコイツに作っている訳ではない。
「いーじゃん、お前の弁当美味いんだから」
「ち。嫌いなもんも食えよ」
だが、こう真っ直ぐに美味いといわれると悪い気はしない。俺の肩に手を置いた田島に連れられて教室を後にした。追いかけてくる視線は二種類。邪魔な奴だと敵意を向けてくるものと、所謂ところの腐った女子たちの視線だ。
正直、俺はこの二つには馴れている。というのも、俺の兄貴は両親がいない所為かブラコンを拗らせた残念な人だ。兄は中性的な美形の癖にひ弱さとは無縁の、細い割りに鍛え上げられた身体つきと、周囲に自然と人が集まるカリスマ性と、優秀な頭脳を持った男だった。お互いの母親似であった俺たちはまったく似ていず、しかも俺は平凡より少し下の頭脳と容姿。まぁ、五月蝿かったわけだよ、周囲は。
ご他聞に漏れず、コンプレックスに塗り固められた俺を救ってくれたのは、兄貴の友人だった柚木さん。兄貴と並んで遜色ないくらいの頭脳と容姿の上に、スポーツもそこそこ出来る。その上、俺みたいな子供の話を本気で聞いてくれて、優しく導いてくれた。俺の恩人とも言える人。
恋人になったときだって、子供の俺に週末ごとに付き合う『デート』という言い訳が欲しかったのは知ってる。高校生の男が小学生男子を本気で相手になんかするものか。しかも、兄経由で聞いた柚木さんの話はひとつや二つじゃない。まぁ、モテるよね。カッコいいもん。
「お前、最近開き直ってないか」
「まぁな、ああいう視線には馴れたもんだ」
いちいち気にしていじけていても、俺のような容姿と体格じゃ気持ち悪いだけだ。ブラコン兄貴と柚木さんの二人に甘やかされ守られた俺の中身は、少々男としては頼りない。立派な体格が泣くと自分でも思う。だからこそ、強くなりたい。
身体に見合う心を。
兄ちゃんの『可愛いさゆちゃん』ではなく、柚木さんの『天使』でもない。等身大の男でいたい。
「なぁ、佐雪」
ふと、田島の大きな手が俺の頭を撫でた。
「無理をする必要ないんだぜ」
「無理?」
子供のように撫でられるのは気持ちが落ちつく。いけない。また弱くなってる。
「お前さ。ホントに平気な訳じゃないだろ。ほら、兄ちゃんに言って見ろ」
「過保護な兄ちゃんは二人もいらねぇよ」
田島の姉貴と俺の兄貴は付き合い始めて二年になる。当然結婚も視野にいれた付き合いだ。このままなら田島は俺の義理の兄になる訳で。それはいいんだけど、同じ年の癖に妙に兄ちゃんぶるのが困る。お前、二ヶ月しか変わんねぇじゃねぇかよ。
「お前の飯さ。お前と同じなんだよな。優しい味がする。姉貴もこの味が育てた人ならってお前の兄貴との結婚決めたんだぞ」
「何だ、それ」
初めて聞いたよ。お姉さん、何言ってるの。
「それがお前のいいところだろ。俺の真似したりしなくていいんじゃね?」
田島は初めて出来た同年代の友人だ。未来の義兄弟だから純粋な友人じゃないけれど、それでも気軽に話せる同年代の相手は嬉しかった。
「行って来いよ。美弥さんとこ」
「何で柚木さんだよ」
俺がむくれたフリをする。そんなのがポーズだなんて聡い田島にわからない筈もない。
「いいから、行け」
促す田島に、渋々と従ったように俺は立ち上がった。

通いなれたアパートのドアに鍵を差し込む。
新しい賃貸によくあるタイプの中央に階段と通路があり、それを挟むようにして部屋への扉がある。昨今のプライベートを重視する造りだ。
部屋の中にはそこここに俺の私物が置かれている。本やゲーム機。それにタオルや洗濯物。
ソファへごろりと横になった。またソファで寝たのか、ソファから柚木さんのシャンプーの香りがする。柚木さんに抱きしめられているような錯覚に、俺はそっと呟いた。
「柚木さん、大好き」
「うん、それは嬉しいんだけど、何でさゆがここにいるの?」
背後からした声に、俺はがばりと起きあがる。
「ゆ、柚木さん? 何で」
こんな平日の昼下がり、柚木さんが部屋にいるわけが……。
「有給消化。大学に迎えに行くつもりで田島セコムにさゆの居場所知らせろって、メールしといたんだけど」
「あの、野郎」
知ってて俺をけしかけたな。お姉さんと一緒のところを警戒されて殴りかかられた柚木さんは、田島を姉のセコムと呼ぶ。仲が悪いかと思えば、変なところで繋がってて、驚かされることも多い。
「さゆ、何かあった?」
真剣な顔で覗き込まれて、俺は見とれると同時に慌てるという器用な反応を示す羽目になった。
「別に、何でもない」
「さーゆ。嘘はつかない」
幼い頃から俺のコンプレックスを取り除いてきた柚木さんには全てお見通しだ。ソファへ座った柚木さんが俺を背後から抱きしめてくる。でっかい身体の俺を膝に乗せて子供みたいにゆらゆらと揺らした。
「さゆ。覚えておいて。俺はどんなさゆでも好きだよ。これからもずっと」
「うん」
あやす様に降ってくる柚木さんのキスは優しすぎて泣きそうになる。甘やかされて優しくされすぎて、俺はちっとも強くなれない。
「そのままのさゆでいい」
俺の気持ちをくじく言葉。でも、それはとても心地いい。
そっとソファへと押し倒される。柚木さんの腕は優しいけれど強く絡み付いて離れない。
「こんなずるい男に捕まったのを不運だと思って」
真っ直ぐに俺を見る柚木さんの瞳は、暗く強い光が宿っている。うん、知ってる。でも俺はここがいいんだよ。

<おわり>

ちょっとヤンデレ気味な美弥。
衛雪視点は次週NEXT

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