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伝説と噂話<キャッチ>番外編 

繁華街の裏通り。俺がこの通りを歩くのも久しぶりだ。以前、この通りでピンクサロンのキャッチをしていた。もちろん、俺はキャッチといってもアルバイトでしかも、ぺーぺーの看板もち。体力重視でどこか抜けていると思われる俺にはぴったりのアルバイトだった。
そこで知り合った滋さんとまさか、ずっと付き合うことになるとは、そのときの俺にはまったく予想外だったんだけど。

「おにーさん。いい子いますよー」
俺の前に立ちふさがったのは、看板握った若い男の子だ。まったくモテそうにない俺の外見を一目見て、いけると思ったんだろうが。
「悪い。興味ない」
けんもほろろな言い方は、勤めているカフェの店長・航さんの真似。実際、俺は女にはまったく興味が無い。
「そんなこと言わずに見るだけでも」
「いや、ホントに急いでるんで」
中々引かないキャッチに焦れて、どうしようかと思っていると、キャッチの背後から本職らしい男が肩を掴んだ。
「止めとけ。そいつ、うちの店の伝説のキャッチだぞ」
「へ?」
意外な言葉に俺は相手の顔をしっかりと見据えるが、覚えは無い。
「相変わらず、呆けてんな」
どうやら、捕まった相手は俺がバイトしていた店の奴らしい。伝説って何がだ?
「良く聞けよ。こいつお前の大先輩で、お前と同じように看板もちやってた訳。ある日、こいつこのあたりで幅利かせてる風俗経営のヤクザに声掛けたのよ。おじさん、いい子いるよーってな」
そういう伝説かよ!
「し、滋さんはヤクザじゃありません!」
他にもいろいろと突っ込みたいところはあったが、取り合えず、そこだけは訂正を求めたい。確かにダークスーツが超絶に似合う人ではあるが。
「何だ、お前あいつと知り合いなんだ?」
憤慨している俺を揶揄するように顔を寄せてきた男が、一瞬にして引きつった。
「そう。知り合いなんだ。あんまり苛めるなよ」
低音のよく響く声。何かを含んだような物言い。馴染みのありすぎる声に背後を振り向く。
「滋さん」
「あんまり遅かったから、迎えに来た。何絡まれてるんだ?」
ギロリといささか剣呑な目つきで相手を見る滋さんに、俺は慌てて手を振った。
「何でもないです。ほらこの店、俺が昔バイトしてた店ですよ」
「ふん、そうか。やっぱり、使いなんぞ航にやらせれば良かったんじゃねぇか」
「だから! バーテンダーいなかったら、誰がカクテル作るんですか。俺の不味いカクテルなんてお客に出せませんよ!」
まったく、どっちが絡んでるんだか。
「はい。忘れ物! 渡しましたよ。オーナー」
態と『オーナー』を強調して、胸元に書類を突きつけた。
「ち、可愛くねぇな。言い草が航に似てきやがる。おい柳、せっかくだから飯でも」
「オーナー。仕事中です。公私混同はゲンキンです」
腰に手を当てて睨んだところで、俺じゃちっとも怖くないのは解ってる。でも滋さんは俺に向って両手を上げた。
「はいはい。降参しました」
「では、オーナー。失礼します」
深々と頭を下げ、くるりときびすを返す。
「気をつけて帰れよ」
背後から降ってくる滋さんの優しい声に、俺は満面の笑みでうなずいた。
「うん、滋さんも!」
周囲があっけにとられて俺たちの会話を聞いていたことも知らない。赤の他人の噂なんてどうでもいい。俺たちだけが真実だから。

<おわり>

Jガーデンの春の「帰っちゃうのポスター」。秋ガーデンがこの週末なので公開。

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