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一緒につくろう<愛情こめて作ります>番外 

秋イベントの無料配布SS。愛情こめて作ります。さゆちゃんの家にはじめてのお泊り。

「いらっしゃい! 美弥さん!」
弾んだ声に出迎えられる。大きな瞳はキラキラと輝き、丸い鼻とふっくらとした頬は子供らしい可愛らしさを強調していた。ニコニコと嬉しそうな顔を見るまでもなく、大歓迎の姿勢だ。
「やぁ。さゆちゃん、こんばんは」
「こんばんは!」
俺が軽く頭を下げるのを真似て、ぺこりと頭を下げる動作も元気一杯で微笑ましい。これは弟を可愛がる衛雪の気持ちも解る。
「ねぇ美弥さん。今日は何作るの?」
通いなれた真新しいキッチンに向いつつ、俺は黒いカフェエプロンを取り出した。隣でさゆちゃんが揃いのエプロンを身に着ける。
いつもならば一緒に買い物をして作るものを決めているが、今日は特別だ。
「今日はさゆちゃんの好きな特製和風シチューです」
大きく切った野菜をシチューの元と牛乳で煮込んだものは、普通のシチューと変わりが無い。違いは使用する野菜が里芋や大根であることだ。
さゆの兄である衛雪は子供舌とでも言おうか、肉や卵中心の食卓が好みで、家計を預かるさゆには頭が痛い。
いや、預けるなよ。しっかりしてるように見えてもさゆちゃん小学生だぞ。毎日何を作るか、兄にバランスのいい食生活をしてもらうにはと頭を悩ませている。
「衛雪がいると食べられないだろ?」
「うん! ありがとう美弥さん」
今夜、衛雪は校外活動として、有志生徒と共に災害地へのボランティア活動へと出掛けていた。衛雪の心情的には可愛い弟を一人残して出掛けることには絶大な忍耐を強いられることだったが、両親が亡くなってから残されたさゆを育てるためには、優秀な成績とともに校外活動の実績を積む必要もある。大学の奨学金への切符はいずれ望む企業へ就職の最短コースを約束するものだ。
しかも、生徒たちのリーダーシップを取る機会を多くすることで、反感を減らすことも出来る。
衛雪曰く『俺の天使な弟との時間を削ってもやらねばならないのだ』と悲壮な決意を固めていた。
「でも衛雪には内緒、な」
「うん。当然!」
俺が人差し指を口元へ立てると、聡いさゆは大きくうなずく。
兎に角、衛雪は面倒なのだ。さゆちゃんに近づく相手は誰であろうが許さない。というよりも、誰よりも衛雪自身がさゆを独り占めしたいのだ。
まぁ、そういう訳で俺とさゆちゃんが友達だってことは衛雪には絶対に内緒。お泊りなんて論外です。
「えへへ。兄ちゃん、絶対にお泊りなんて許してくれないもん。兄ちゃんがいない間は、外にも出ちゃ駄目って言うんだよ」
おいおい、さゆは母親がいない子ヤギか何かか。兄の留守に遊ぶのも出来ないって小学校男児には拷問に近いぞ。
「今日は俺が作るから、さゆちゃんはゲームでもしてなよ」
「え?」
さゆちゃんがきょとんと丸い瞳を見開いた。
「今日は特別。さゆちゃんは待ってて」
大体、子供のさゆが当たり前のように台所へ立つことがおかしい。いや、普通だと思うな。
「でも」
ぐずるさゆは珍しい。大抵は聞き分けが良いんだけれど。そう思って振り向くと、さゆは寂しげにこちらを見上げていた。
「一人じゃつまんない」
ぽつりと呟くさゆに俺は大いに慌てる。
「じゃあ、さゆちゃん。お手伝いしてくれるかな」
「うん!」
ぱぁっとさゆの顔が輝く。天使か。
湯を沸かし、里芋をゆでる。
「さゆちゃん、里芋の皮むいて」
「はーい」
「熱いから気をつけてね」
「ちゃんと判ってるよぉ」
おっと、あんまり口出し過ぎてむくれられた。毎日の成果か手際は良すぎるくらいだ。俺が大根の皮をむくのに悪戦苦闘している間に、さゆは作業が終わったらしい。
「美弥さん、こっち片付けようか。冷蔵庫入れるものある?」
「ああ~~っと、さゆちゃん待って。ちょっと待って!」
保冷バッグへと手を伸ばすさゆを俺は慌てて引き止めた。普段出さない俺の大声にびくりとさゆが手を引く。
「ご、ごめんなさい」
叱られると思ったらしいさゆは、下を向いて唇を噛んでいる。泣くの堪えてるね。
「さゆちゃんには内緒にしようと思ってたのに」
俺は保冷バッグを開け、小さな箱を取り出した。
「はい、さゆちゃん。ハッピーバースディ」
目の前に差し出された箱を見て、さゆちゃんは涙が溜まった瞳を上げる。
「美弥、さん?」
テーブルの上に乗せた箱を開くと、小さなホールケーキが出現した。花の形の生クリーム、棒チョコとフルーツでデコレーションされた、誰が見ても可愛らしいとしか表現しようのないケーキ。
「可愛い!」
さゆの口から漏れた感嘆に俺も満足。可愛いもの大好きなさゆちゃんだ。きっと喜んでくれると思った。
「食事の後に出して、びっくりさせようと思ってたんだ」
俺の言葉にさゆがごしごしと腕で涙を拭う。
「嬉しい。ありがとう美弥さん。大好き!」
大きなキラキラと輝く瞳に俺が映っていた。こういう時には、何か衛雪に勝った気分で気持ちいい。
「どういたしまして」
「ねぇ、美弥さんの誕生日何時? 俺もお祝いする!」
真っ直ぐな瞳が俺を見上げてくるのに、俺は笑い返す。さゆちゃんは一方的にされるだけは嫌いだ。
一緒に料理をするようになってから、必ずお返しだと俺の弁当を作ってくれるようになってる。
「十二月だよ。クリスマスと同じ日。楽しみにしてるね」
「うん。絶対ね」
律儀なさゆのこと。それは必ず守られる約束だ。
「じゃ、夕飯の支度に戻ろうか」
「美弥さん。それで今日、俺の好きなおかずなんだね」
一生懸命なさゆちゃんの笑顔はとてもキラキラしていて可愛らしい。ふん、衛雪お前のいない間のさゆちゃんの笑顔ゲットだぜ。独り占めになんかさせるか。

<おわり>

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