スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
*Edit TB(-) | CO(-) 


冬の朝に<身勝手な男>新年SS祭り 

新年SS祭り第一弾は三位「佐伯✖久世」幸せな久世を。とのリクで書いてみました。
本編「身勝手な男」はこちら

寒さに震えて久世隆大は目を覚ました。身体を起こすと、ベッドの隣にあった温もりが無い。道理で寒い筈だ。
二人して寝相が悪い方でも無いし、寄り添って眠るのが癖になっている所為で、エアコンは寝る前には止めることが多い。
耐えかねて暖房のスイッチを入れた。会社は年末休暇に入り、ここ数年入っている柔道教室の方も年末に通ってくるような生徒はいない。久世の教えている年少の子供たちは冬休みで両親の田舎へ帰るような子が多いのだ。
ここのところ、年を食ったのを自覚して、大掃除をするような箇所は残さないようにしているし、料理は久世の恋人の方が得意だ。
起きだしたところで暇を持て余すだけだ。
恋人はどうせ買い物か何かだろう。通常、デパートや駅ビルの食料品売り場は、年末だけは開店時間が早い。ふかふかの布団に包まり、温もりなおしていると自然と眠気が襲ってくる。それに身を任せるようにして、久世は意識を放り出した。
冬の朝の二度寝は最高に気持ちがいい。

「おい、いい加減に起きろ。昼過ぎだぞ」
「うん?」
揺すられ目を開くと、目の前に美形の顔。もう十年以上一緒に暮らして、いい加減に慣れてもいいと思うが、久世は驚いて目を見開いた。
「近けぇよ」
「見惚れるなよ」
さらりと自信満々で片目を瞑るのは、久世の恋人で同僚でもある佐伯英次だ。誰もが認める美形で、四十過ぎてもスレンダーだが筋肉質な体系をしている。
「嫌味な奴だな」
決まり過ぎている様に、つい本音が口を突いて出た。
「男前で料理が美味くて世話好きで、おまけにセックスの相性もいい。最高の恋人に対してその言い草」
「それ、本気で言ってんだろう」
確かに恋人の欲目を捨てて、客観的に見てもその通りだろうとは思うが、口にするところがいちいちイラつく。
「とりあえず、起きろ。飯にするぞ。それとも俺の顔も見ずに眠っていたいなら止めないけれどな」
「いや。起きるよ、腹減った」
「そうか。お前の好きな白菜の味噌汁とぶり大根だぞ」
腰に来そうな低温の声だが、内容には色気もへったくれも無い。
食卓には佐伯が言った通りのメニューが並んでいた。さすがに男の二人暮らしではそんなに何品も作ることはない。
向かい合わせに腰を下ろし、食事を始めると、ドアの呼び鈴が鳴った。
二人して顔を見合わせる。世間は大晦日。佐伯の兄弟もそれぞれの家族がある。両親は勤務医で大きくなった息子しかいないとなれば、当直は家族のあるものに譲るのが当たり前だ。いくら久世が佐伯家族のお気に入りでも訪ねてくるには不自然だ。
「母さんから何か届け物かな」
もう一度遠慮がちに呼び鈴が鳴る。立ち上がる久世を制したのは佐伯だ。立ち上がり玄関へと向かったのはさきに食事をさせようという気づかいだったのだが、これが不味かったと気付いたのは、ドアを開いた瞬間に目の前の老女の零れ落ちそうな瞳を見た瞬間だった。

「え~~と。俺の恋人。佐伯、俺の母親」
久世は何となく隣に座った母親から目をそらしつつ、口籠る。食卓は最大級の気まずさが漂っていた。まぁ、当たり前だ。独り者の息子の家を訪ねて来たら男の恋人に出迎えられる。息子が男性としか付き合えないのは娘から聞いてはいるが、そんな事態は想像していなかったに違いない。
「佐伯英次と申します。息子さんとお付き合いさせていただいております」
熱い茶を入れてくれた男が向かい側へと腰を下ろす。この様子では昨日今日の付き合いと言う訳ではなさそうだ。
「ええ、とお仕事は何を?」
「息子さんの同僚です」
「そうですか。うちの息子は何処の会社に勤めているのかしら」
「同じ区にある製造卸業です。城南鋲螺という建築に使うネジやボルトを扱う会社です」
「はぁ。お宅のお母様はこのことをご存じなのかしら」
「はい。両親も兄弟もその家族も認めてくれています」
「ちょ、母さん、いきなり何聞いてるの?」
はきはきと答える佐伯の声に、久世も大分落ち着いては来たが、母親がとっ散らかってるようだ。思わずストップを掛けた。
「でも、お母さん全然何も知らないわ。何処に勤めたのかも、普段どうしてるのかも。お付き合いしてるって、もう何ヶ月? 何年? 隆大、何も言ってくれないじゃないの」
「御幸からは何も聞いてないのか」
詰め寄る母親に久世はタジタジだ。恋人が出来るまでは妹の御幸が頻繁に遊びに来ていたし、てっきり御幸から現状は伝わっているものだと信じて疑わなかったのだが。
「御幸が何時私に話すの?」
母親から恨みがましい視線を向けられた久世は自分の至らなさにため息を吐く。常時家にいる専業主婦の母親は携帯を持っていない。しかも、久世に勘当を言い渡した父親は、休みの日には母親べったりだ。母がいなければ何も出来ない人なのである。御幸が大学を出て就職した先はすばらしく忙しい商社とあっては母親と二人きりの時間などとれる筈もない。
「ごめん。てっきり伝わってると思って」
「まぁ、さすがにお父さんが何時いるか分からない状態じゃ連絡も出来ないか」
久世が頭を下げたことで、母親もある程度は冷静になったらしかった。そこで漸く久世は何も解決していないことに気付く。
「ところで、母さん。何しに来たの」
「あんたが一人暮らしだと思ってたから」
「いや、そうじゃなくて」
「俺がご迷惑なら、席を外しますが」
このままでは埒が明かないと思った佐伯が声を掛けると、久世の母親は理解不能といわんばかりの眼差しを佐伯へと向けた。
「いえいえ。お邪魔をする気はありませんよ。こんな言い方は何ですけれど、本当にうちの息子の何処が良くて付き合ってらっしゃるの」
キチンとした物言いと身だしなみ。気遣いが出来る上にイケメンとくれば、大抵の女性は好感を持つ。
「好きになったのは俺からです。仕事も出来るし、誠実で優しくて、何よりも好みのタイプでしたので」
「あらあら、お熱いこと」
反応の良さに、佐伯は内心ガッツポーズを決めていた。綺麗な顔と言われ続けていいことなど無いと思っていたが、どうやら久世自身も久世の母親も好きな顔らしい。このまましおらしいタイプを演じ続けた方がいいかと考えたとき、手を付けられない昼食が冷めきっているのに気づいた。
「お茶を出したきりで。よろしければ、一緒に昼食を召し上がっていかれませんか」
せっかく久世の好きな飯だったのに。
「あら、いいのかしら」
「ええ、ぜひどうぞ」
嬉しそうな母親の顔に、久世は口を挟まない。それとも佐伯の腹などお見通しということか。
温めなおしたぶり大根と味噌汁を口にすると、久世の母親は目を輝かせた。
「美味しい。佐伯さんが作ったの」
「幼いころから両親が働いていたので。自然と」
「そうなの。いいお嫁さんをもらったのね、隆大」
思わず味噌汁を吹き出しかけた久世が喉を詰まらせた。
「この子はもう」
呆れたような母親の言葉に、久世は目を白黒させている。一方の佐伯といえば『認めてくれるなら、嫁でも婿でもなんでもオッケーです!』心の中は鼻歌状態である。
結局母親は昼食を過ぎても帰る様子は無く、御節の仕上げを始めた佐伯と共に台所へと立つ始末。
何をしに来たのか分らぬまま、夕飯が済んだ後になって、やっと帰ると言い出した。
「暗いし、送っていくよ」
久世が立ち上がり、佐伯がコートを取る。
母親が遠慮するのに、駅までは送りたいと三人で家を出た。老女と息子の年代の男が二人。周囲からはどう見えているのだろう。母親と似ていない兄弟だろうか。
久世は心の内でそんなことを考えつつ、遅れがちになる歩みを進めた。時折、前を歩く母親と佐伯の歩みが止まる。
久世が追いつくのを待って、また歩み始める二人に、久世はクスリと笑いがこみあげた。
駅へと向かう母親が、くるりと振り返る。
「たまには帰ってきなさいな。お父さんだって内心は寂しがってるから。その証拠に」
ふふっと最後まで言葉にせずに母親は改札を潜った。その背を追うと、人ごみに隠れるように母親へと近づいていく男がいる。帽子を目深に被り、古いスーツを着た男が母親と並んで階段を上るのを、久世は驚きと共に見送った。
「あれ、お父さんか?」
呆然と二人を見送る久世に佐伯が声を掛ける。
「ああ。馬鹿だな、何時間待ってたんだか」
声を出すと、涙ぐみそうになった。それ以上は言葉にせずに歩き出す。肩をポンと叩かれた。顔を上げると、さっさと歩み去る佐伯の背がにじんだ。
どうやら、一人にしてくれるらしい。久世は立ち止まり、自動販売機のコーヒーを買った。ひと缶飲む間だけひとりにしておいてくれる。そんな恋人の優しさを噛みしめながら、ホームへと向かう両親の小さくなった背を思い起こした。
来年はちょっと顔を出してみるか。

<おわり>

本年最後の更新です。ありがとうございました。来年もよろしく。
新年SS祭り第二弾「ソルフェース✖リベア」NEXT

FC2 Blog Ranking
完結小説一覧
スポンサーサイト
*Edit TB(-) | CO(-)  Tag List  [ 小説 ]   [ メンズラブ ]   [ リーマン ]   [ 同僚 ] 


Back      Next

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。