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他国の空<水の魔法陣・焔の剣>新年SS祭り 

新年SS祭り第二弾は「ソルフェース✖リベア」
本編「水の魔法陣・焔の剣」はこちら

「お断りいたします」
薄茶の髪に紫紺の瞳の少年はきっぱりと言い切った。ここは魔物退治を旨とする、第一騎士団の隊長の執務室である。
「しかし、暁殿。貴方は我が騎士団の守護魔術師筆頭にあたる。焔の剣の騎士の守護者としてこれ以上の方は」
目の前に座していた騎士団長ラフ・シフディが思わずと言った体で立ち上がる。焔の剣の騎士リベア・コントラはあまりに王宮や貴族の面々に良く思われていない。力を持つことは恐れる癖に、一線を退くことは許さないのだ。
ならばと、騎士団長になったラフが考えたのは、他国への派遣である。魔術は廃れて久しいものなのだ。退魔の剣を持つ騎士の派遣はティアンナの立場を強くし、尚且つ国内の過激な勢力からリベアを遠ざけることも可能だ。
「私よりも適任がいらっしゃいますよ。ティアンナではすでに恐れの方が先にありますが、他国へ魔術の力を示すならば、我が西の宮最上最強の魔術師を派遣いたしましょう」
少年魔術師がにっこりと屈託のない顔で笑う。それに何故かラフは恐怖を覚えた。

「ソル!」
リベアが声を上げた瞬間に、リベア以外の騎士たちの足が止められる。魔術の守護陣には魔物は入ってくることが出来ない。代わりに自分たちも動くことが出来ない。
「蒼殿、どういうことか。リベア殿の助けに行けぬではないか!」
足止めをされた騎士の一人が声を上げるが、それは蒼のソルフェースの冷笑によって叩き落とされた。
「邪魔だ」
リベアが獣の頭を持った魔物へと走りこむ。魔物の頭部から伸びた角がリベアへと襲い掛かった。交わしきれないそれにリベアの腹部が切り裂かれる。が、その痛みさえ感じていないかのようにリベアは真っすぐに魔物の喉元へ剣を振るう。
倒れ伏した魔物に、リベアは容赦なく留めの一撃を振り下ろした。
青黒い魔物の返り血に濡れたリベアを、周囲の騎士たちは呆然と見る。退魔の剣の使い手と聞いてはいたが、想像とは異なる凄絶な戦いぶりに声もない。
「リベア殿。その血は早く落とされた方が」
魔物の血は人には毒だ。そのことは広く知られている。
「ああ。井戸か川は無いか。すぐに落としたい」
「それならば、この先に村があります。魔物が退けられたことを知らせねばなりませんし」
何とか声を掛けた若い騎士に、リベアは何でもないことのように言葉を掛けた。その事実に、騎士はこれが通常なのだろうと、リベアの立場を憂いた。

村は騒然とした騒ぎとなった。いきなり現れたボロボロの騎士たちと、明らかに他国の者らしい血塗れの怪我人とくれば当たり前だ。
が、村人たちは街道に巣くっていた魔物を退治したと知ると、一転しての歓迎姿勢となる。
「現金なもんだな」
「まぁ、それが当たり前だ。正直で結構なことさ。自分を犠牲にして国に尽くす義理もない」
リベアは与えられた一室のベッドの上に身を横たえたまま、ソルフェースの憮然としたつぶやきを笑い飛ばした。
「リベア殿は……」
若い騎士が口を開いた後、逡巡してもう一度言葉を発する。
「そのように全てを受け入れられるのですか」
未だ若い騎士には理解できなかった。何ゆえにそこまでと思ってしまう。
「俺は、人にはそれぞれの役割があると思っている」
「リベア、殿」
「俺は、人として大きすぎる力を得た。それを持ったからにはその力は振るうべきだ。国を守る者たちは国を守るべきだし、庶民に苦しさを押し付けるような真似はするべきじゃない。少なくとも俺はそう在りたい」
「お前はまったく」
真っすぐに言うリベアにソルフェースの呆れかえった言葉が追った。
「何だソル、不満そうだな」
「いや、お人よしに呆れているだけだ」
「お前に言われたくないな。お前だって人の感情には敏感だろう」
「悪意を向けられることが多すぎてな」
人の悪い顔で笑うソルフェースはその秀麗な顔も相まって魔物染みた印象を与える。だが、そのやり取りに若い騎士はぷっと噴出した。
「すみません。蒼殿が何だか子供みたいで」
古の魔術を秘めた国・ティアンナの最強の魔術師。すでに数百年の時を過ごした魔術師と退魔の剣を持つ伝説の壮年の騎士の二人のやり取りは、まるで酒場で交わされる旧知の友人たちの愚痴に似ていた。
騎士たちは少々緊張していたのだ。他国からくる伝説の騎士とその守護魔術師に。直接見た時には、伝説から想像したのとはまったく異なる小柄な体格の騎士と若い魔術師を意外に思った。ところが戦う姿は凄絶過ぎるもので、それも意外であった。力があるのならばもっと簡単に捻じ伏せるのだろうと考えていたのだ。まるで命さえ的にするようなギリギリの戦い方。
だが、二人の会話はそういった緊張を一気に解いた。
「じじいの癖にガキみたいだとよ」
「今どきの若いのは生意気でいけねぇ」
クスクスと笑い声を上げるリベアに、ソルフェースが苦い顔をするが、言う程気分は害していない。
騎士たちも堪えきれずに笑いだす。
「楽しそうだね。騎士さんたち、怪我が治るまで滞在するんなら、温泉はどうかね。怪我に良く効くよ」
ドアが開かれ、顔を出した農家の親父はパンとバターを人数分置きながら、そう勧めて来た。
「温泉?」
「リベア殿はご存知ありませんか? 地中から湧く天然の湯です」
「温かい泉のようなものか?」
リベアには想像がつかないが、興味はある。
「いつでも入れる風呂のようなもんだ。入るか」
「ほう。ありがたいが、今日は遠慮する」
ソルフェースは知っていたようで、リベアに想像がつくように説明しなおした。
「何故だ? 怪我なら塞がっている筈だぞ」
「え? もう」
「ああ。守護魔術でな。だが、痛みはまだある。歩ける訳じゃない」
ソルフェースの言葉に騎士の一人が驚きを露にする。
「何処だ? 距離はあるのか」
「いんや。うちの裏の林の中だよ」
いやに乗り気なソルフェースに、リベアは嫌な予感が拭えなかった。
「そうか。じゃ、行くか」
「待て。俺は行けないぞ」
「まぁ、そう遠慮するな」
ソルフェースが言うなり、リベアの身体が肩に担ぎあげられる。
「おい、こう来るか。降ろせ。行くなら自分で歩く」
細い体でリベアの厚い身体を担ぎ上げたことに、騎士たちが唖然とソルフェースを見上げた。
「暴れるな。落とすぞ」
「そう思ってるなら降ろせ」
どうやら足は動かないらしく、腕だけをソルフェースに叩きつけるが、その細い身体はびくともしない。
呆然と見送ってから、騎士たちは我に返ったようで、各人の目の前のパンにかじりついた。

「強引だな」
「怪我にいいらしいからな」
温泉は林の中にある岩場の間に湧いていた。そこに石を組んで積み上げ、浅い湯船のようになったそこは結構広い。
頭を石に乗せるようにして横たわるリベアは、すでに諦めも入っていた。
「どうせ、あの連中の怪我が治るまでは移動も出来ない」
最後の大物はリベアが仕留めたが、その前の戦闘ですでに騎士たちはボロボロだった。魔物との戦いに慣れていないのは明白でこれ以上の無理はさせられないと判断したのだ。
「仕方がないな」
「それまでに多少楽しんだところで罰はないさ」
「お前が楽しいだけな気がするが」
「いいだろう」
どう足掻いたところで腹の痛みが減るわけでは無い。それなら、ここでゆっくりと傷を癒しても悪くはあるまい。
「まぁ、付き合ってやってもいい」
ソルフェースはただ温泉に浸かるリベアを眺めているだけだ。
「せっかくヤコニールが作ってくれた時間だ。大事に楽しむさ」
ソルフェースの口の中でつぶやいた言葉はリベアには聞こえない。変わらぬ姿に畏怖を覚えられるようになって、ソルフェースは一切国内では姿を見せなくなった。リベアと共に何処かへ行くことも自由にならなくなって久しい。
だが、他国でならば自由だ。リベアの傍らにあっても何も阻むものはない。
リベアを見下ろすと気持ちよさげに瞳を閉じている。今はまだ二人だけの時間を楽しめそうだ。

<おわり>

第三弾「渥美✖鈴木」NEXT

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