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仮初の守護者<番外>*R15 

ゆっくりと身体の奥を穿つそれに、ベルゼの口から思わず苦鳴が漏れた。
やはり最初は酔っていたのだろう。男同士の情交が初めてでは無いが、それも未だ育ち切っていいない身体であった頃の話だ。
それも、傭兵としての技術と引き換えの単なる吐きだし口としてのものだった。正直、ベルゼの身体ひとつで生き残るための術を教えてもらえたのだから、感謝している。
身体の反応などは所詮生理的なもので、それ以上でもそれ以下でもない。そう思っていたのだが。
「ベルゼ。痛むなら俺の肩でも何でも噛んでろ」
低い声が甘く囁いたかと思うと、ベルゼの身体をきつく抱きしめ、口元を肩へと持っていく。そんな風な優しい気遣いが、ベルゼには何とも気恥ずかしかった。
いい年こいたおっさんが、若い男にいいようにされていると言う図は羞恥で軽く死ねる。しかも、相手に良い様に手の上で転がされているような感覚は、ベルゼの中には反発しかもたらさない。
例え、相手が百戦錬磨の数百年生きた魔術師で、自分のことを本当に大事に思ってくれていると知ってはいても。
身体が慣れるまでだろう、じっと動かない蒼の魔術師の銀の髪がベルゼの頬をくすぐる。
「おい、辛いだろう。いいぞ」
「いや、お前の中をじっくりと堪能しているだけだ」
そんな強がりを言うが、いくつになろうが男としての欲に逆らうのが辛いことくらいはベルゼにも想像がつく。
「は、そんなに悪いもんでも無いぞ。お前の方が辛いだろう」
そんなことを言った蒼にベルゼは笑った。何処まで人がいいのか。こんなおっさんを壊れ物か何かだと思っているのか。
「馬鹿か」
「かもな」
罵ったベルゼに、蒼は薄い笑いを唇に乗せた。凄絶な程の色気が溢れた口元にベルゼは釘付けになる。
「動くぞ」
「え…ッ、ああ」
身体の反応は正直だ。感じやすい場所を突かれれば、声も出る。ベルゼは声を抑えようと口を塞いだ。それに気づいたのか、蒼はベルゼの手を外し、ベッドへ押さえつける。声の漏れる口は、その唇で塞いだ。
朝まではまだ時間がある。

妙な体制を取らされて、バキバキになった身体をほぐすようにして、ベルゼは井戸の前で伸びをした。
農家の納屋の二階は、昔は食糧庫であったそうだが、息子たちが独りだちして改装した母屋は、今では夫婦二人だけとあって、必要なものや倉庫などもすべてそちらへ移されている。ベルゼが借りているのは不用品を押し込まれた納屋の二階部分だけだ。
この街へ流れ着いた時、仕事をするための仮の宿と思っていたが、すでに数年住み付いている。井戸の水を数回運んで、水瓶を半分ほど満たした。身支度に使う程度だからあまり大量には必要ない。
「ベルゼさん。いらっしゃいますか」
ベルゼが最後の水を運び終えたとき、階下から控えめな声が掛かった。相手は顔見知り程度だが、一度命を助けた所為か、非常に慕われている。
「何かあったか」
上がってくるように促すと、どんよりと淀んだ顔のまだ若い騎士リベア・クラージェが姿を見せた。
「何だ。お前また落ち込んでるのか」
「はい。というか、もう無理。限界です」
英雄と同じ名を持つ、平凡だった筈の男が今じゃ英雄候補として祭り上げられている。貧乏貴族には確かにキツイ。
「確かに焔の剣は抜けました。でも、あれは何かの間違いだったんじゃないかって気がするんですよね」
「間違いかどうかはお前が決めることじゃねぇ」
相手が若い所為か、ベルゼは柄にもなく、言わなくてもいいような説教をしてしまう。
「精一杯やったが駄目だとなれば、何らかの手を考えるだろう。俺はレイがそこまで阿呆だとは思えねぇ」
そう、この男はレイに師事しているのだ。ベルゼにはレイが無理難題を押し付けるような男だとは思えなかったし、ベルゼの見るところでもクラージェは化けそうな気がするのだ。
「本当ですか」
「あ?」
意外にも食いついて来たクラージェに、ベルゼは身体ごと向き直る。
「本当に俺はレイさまに応えられると思いますか?」
「応えるかどうかってのは、お前次第だ。お前がそこで諦めりゃ終わりだろう」
真剣なクラージェの瞳に、ベルゼは逆に問い返す。
「お前はどうなんだ? 応える気はあるのか」
「俺にその力があるのなら、応えたいと思います」
青年になり掛けの男の真っすぐな言葉に、ベルゼはにかっと笑った。
「いい覚悟だ。ちょっと太刀筋見てやろう」
「ベルゼさんが、ですか」
外へと促すと、クラージェは素直に笑顔を浮かべる。時折現れては、こうやって弱音を吐くついでにベルゼに教えを受けているが、その際も妙にうれしげなのだ。
「俺の我流なんかより、レイの方がいいんじゃないのか」
数回だけ仕事を共にしたが、レイの太刀筋は非常にキレが良く無駄が一切ない。一度立ち合った奥方も無駄のない剣さばきであると同時に、実践向けの剣だった。
「レイさまは非常に強いとは思いますが、相手は魔物ですから。ベルゼさんみたいに自在に振るえるようになれば、と」
そういわれてしまっては、ベルゼも教える手に力がこもると言うものだ。
結局、ベルゼは昼の見回りに出掛けるギリギリまでの時間をクラージェの稽古に費やしてしまった。

「ベルゼ」
百華楼に出向くと、顔なじみの魔術師が声を掛けて来る。
「暁」
少女めいた可愛らしい顔立ちだが、これでも王宮守護魔術師の筆頭を務めている。その暁が苦い顔をして、ベルゼを呼び止めるのに、ベルゼは悪寒しか覚えなかった。
「あなた何をやったんですか」
「お、俺? 別に何も」
問い詰められるようなことをした覚えは無い。ここのところ、仕事も順調だし、何か困りごとも手に余る件も無い。危ない目にもあっていない。
むしろ、ベルゼに王宮魔術師という後ろ盾があることは知れ渡ってしまったのだから、手を出す馬鹿などいるわけがない。いたとすれば、謀反人か敵国の密偵と疑われるだろう。あとは純粋な馬鹿である。そんなものに絡まれた覚えはベルゼには無い。
「蒼のソルフェースの機嫌が非常に悪いんですが」
その言葉の裏には、原因はベルゼだとはっきりと書かれていた。
「そういえば、あいつ今日往来で俺を捕まえなかった」
普段と違うところと言われても、そのぐらいしか思いつかない。
ベルゼは昼が過ぎたころに見回りのために、花街へと向かう。ベルゼの住処から花街へと向かうには、中央広場の市を通り抜ける必要があり、そこを過ぎたあたりで、必ずといっていいほど、蒼に絡まれるのだ。もはや夫婦漫才と呼ばれている。
ベルゼにとっては有難くないが、蒼が口説いてくる時点で、花街の連中にはとうにベルゼと蒼が寝ていることはバレていた。
「じゃあ、その前ですね」
ベルゼは冷たい視線の暁に天を仰ぐ。何ゆえにこんなに攻められている状況なのだろうか。
「何ですべて吐けと言われているんだ、俺は」
「いえ、吐いておいた方が身のためだと私は思いますよ」
穏やかな顔ではあるが、この可愛らしい天使に騙されてはいけない。
「いつもと違うこと、ありませんでしたか」
考え込むベルゼに、畳みかけるように暁が訪ねる。
「いつもと違う。ああ、クラージェが来てたな」
「クラージェ。ああ、焔の剣の」
暁は以前の焔の剣の主を尊敬しているようで、亡くなって百数十年経った今も『リベアさま』と呼んでいる反面、クラージェに対しての扱いが軽すぎる。
お前らがそんなんだから、あの子も悩んでんじゃねーのか。とベルゼは危うく本音が出かかったが、寸でのところで喉の奥に押し込めた。
「手解きしていただけだぞ」
「まぁ、あの方の嫉妬って良くわかりませんしね。この間は私が貴方と呑んでいたことにも文句をつけておられましたし」
げぇっとカエルがつぶれたような声を上げるベルゼに同情しながらも、おそらくクラージェを警戒しているのは、別の意味だと暁は知っている。ベルゼを魔剣に関わらせたくないのだ。
「きっとあの方、待ち構えておられますよ」
「いやだ、今日家に帰りたくねぇ」
無駄な抵抗を示すベルゼを宥めることは暁は諦めていた。もとより、蒼は好きにするだろうし、ベルゼも何のかのといいつつ、その腕に納まる未来しか見えないからだ。
背後から近づいてくる魔術の香りに、暁はそっと席を外す。
「げ、蒼」
焦ったようなベルゼの声が聞こえるが、今は知らぬふりを通そうと決める。
「あら、暁様。ベルゼが来ていませんでした」
「ああ。邪魔をすると馬に蹴られるたぐいだからね」
色っぽい楼主の豊かな胸元へ顔をうずめるように抱き着いた暁が、楼主を寝所へと誘う。背後から聞こえる助けを呼ぶ声は知らないことにした。

<おわり>
これにてベルゼとソルの夫婦漫才が出来上がるまで編が終了。いろいろと後ろ暗いところを抱えつつ、見守る周囲な感じ。

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