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Working Dandy<3> 

泣き疲れて、いつしか眠ってしまったらしい。
夢の中の春香は、元気に走っていた。それに容易く追いついたことで、有働は『ああ、これは夢なんだ』と自覚した。
夢の中の春香はいつも以上に、可愛くて、差し出した手を、きゅっと握り返してくる。
潤んだ瞳が誘うように、有働を見上げた。
有働は誘われるままに、その可憐な唇に口付ける。
押しつけるように、唇を貪った。
想像の中のディープキスは、あまりにもしびれる様な感触で、有働は我を忘れて、夢中になる。
夢の中の春香は、積極的に唇を求めてきて、思わず下半身が反応を示してしまった。
そのまま、春香に圧し掛かろうとしたところで、目が覚める。

「どうした?」
「うげっ!」
有働は思わず、突拍子も無い声を上げてしまった。
目の前には、今まで好き勝手な夢想を繰り広げていた相手の顔がある。
見る見るうちに赤くなるのが、自分でもはっきりと判った。
どうやら、病院の狭いベッドで二人して眠ってしまったらしい。
ぴったりとくっ付いた身体に、有働は慌てて離れようとして、思わずベッドから転がり落ちそうになった。それを支えたのは春香だ。
春香の腕は、その小柄な体躯に似合わず、バスケ選手に相応しい筋肉がしっかりと付いていた。
中途半端な姿勢で支えられた有働は、反動で春香に馬乗りになる。慌てて降りようとすると春香に抱きつかれた。
「お前、子供みたいだな。体温高くて気持ちいいし、何かいいにおいがする」
離れようとする有働を、抱きしめたまま、春香は寝息を立て始める。
子供のようなのはどっちだ?と言い返したい気分を堪えて、有働は春香を見下ろした。
収まりの付かない下半身が哀れだが、病室、しかも他人のベッドで抜く訳にもいかない。しばらくして、春香が熟睡したら、トイレに行こうと考える。
眠っている春香は、有働よりも四つも上だとは思えない、可愛い顔立ちをしていた。まだ、少年の愛らしささえある。
有働は、その可愛い顔を見ながら、そっとため息を付いた。
どうやら、そのプレイに憧れているだけでは無く、自分はこの先輩に恋をしてしまっていたらしい。
こんなになるまで気づかないなんて、丸っきりの馬鹿だ。
「春香先輩」
有働は自分を抱きしめて眠る春香のおでこにキスをする。
相手は熟睡しているのだから、もっと大胆に迫っても良さそうなものだが、未だに『初恋は同じクラスの○ちゃん』などと云っているようなオクテ男の有働には、それが精一杯の愛情表現だ。
有働は抱き枕のように、抱きかかえる春香の腕を外して、そっとベッドを抜け出した。




そうして、病院のトイレで抜いた当の相手は、今現在まで付き合いが続いている。
いくら小柄だろうが可愛かろうが、相手は立派な大人の男だ。
恋愛経験もろくに無い有働が敵うような相手では無い。精一杯のさりげなさを装った誘いは全て軽くかわされた。
正面切って告白するような勇気は、有働にはとても持てない。
第一、有働は約束が守れなかったことを未だに気に病んでいた。
『俺、春香先輩の代わりに頑張ります。絶対に全国大会に勝って、春香先輩と同じ大学へ行きます。それで、いつか春香先輩の行く筈だった実業団にも行きますから』
病院のベッドで云ったのは、勢いでも何でも無い。まだ、高校生だった有働に出来ることは、それしか無かったのだ。
だがその約束は、有働が大学二年の時に予期せぬ事故で、引き裂かれることとなる。
階段から落ちた有働は、肩を粉砕骨折してしまったのだ。普通の骨折では無く、粉砕骨折となると、直るのにも時間が掛かる。春香と同じ有名私大にバスケットで特待入学していた有働には、バスケットどころか、大学を続ける学費すら工面できなかった。
『バスケ出来なきゃ、ただの人』
と春香は云ったが、有働はただの人以下だった。要領悪く、ついでに頭も悪い。その上、壊れた肩では力仕事も出来ない。あるのは体力だけと云う使えない男の出来上がりである。
『これから、どうしよう』
と途方に暮れた有働に、今のパチンコ店を紹介してくれたのも、春香だ。
何から何までお世話されて、有働は今やすっかり春香に頭が上がらない。
せめて、仕事くらい満足にこなせるようにならなければ、春香と対等に付き合えるようにはならないと、ひたすら真面目に仕事に精進する有働だった。


春香は、この身体の何処にこれだけのものが入るのか?と疑問になるくらいの健啖家だ。酒の肴はさっきから、とうに夕食の枠を超えている。
牛刺しを食べる口元がやたらと色っぽかった。思わず、ごくりと唾を飲み込む。
「おい、ウド。お前、さっきから何考えてるんだ?」
つい、見つめ過ぎてしまったらしい。
ふと顔を上げた春香に問われて、有働は真っ赤になってしまった。
その口にキスしたいとか、あまつさえ、自分のアレをしゃぶらせたいと考えていたなんて、とても云えない。
「お前、変なトコ律儀だからな。俺に付き合ってんの嫌ならちゃんと云えよ」
「そんなこと無いです!」
後ろ暗いことを考えていた所為か、思わず大声で否定してしまった。狭い店中に有働のデカイ声が響く。
春香は目を丸くして、次いで笑い出した。
「お前、サイコー。ホントに可愛いな」
ゲラゲラと笑いながら、春香は有働の肩をばんばんと叩く。
「ま、呑めって。お前、明日休みなんだろう? 嫌じゃ無いってんなら、とことん付き合えよ」
「はいッ!」
勢い良く返事をして、有働は春香に注がれた酒を煽った。これはもう、高校時代からの仕込みに他ならない。逆らうことなど、考え付きもしなかった。
自分が酒に弱いということも、このままではまたしても春香に面倒を掛ける羽目になることも、有働の思考の外へと押しやられている。
それを承知の上で、春香は有働に酒を勧め続けていた。にこにこと笑って酒を煽る有働を見ている。
小柄には見えるが、工場勤務で身体を鍛えている春香は、有働が酔って正体を無くたところでタクシーに突っ込むくらいは出来るし、有働が自分の言葉に逆らわないことなど、判りきっていた。
それに、この背ばかり高くて、一生懸命で要領の悪い可愛い後輩が、自分に気があることも。


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