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どうでもいい男(ひと)<11>完 *R15 

この後に及んで馬鹿な呼び名を止めない朔に、久遠はいっそ呆れる。歯列を割り舌を滑り込ませて蹂躙する。受け身など初めてらしく、苦し気な吐息が久遠を煽った。
やっと離れた唇に、朔はほっとして肺に空気を取り込む。
「ひろみ、さん?」
「呼び捨てでいいわ」
良く響く久遠の低音の声が耳元で囁くのに、まるで毒を吹き込まれているようだと思う。
互いの身体を弄る手にも触れあう唇にも惑う気持ちが無くなった朔の腕を、久遠は止めた。
「ここまで来てお預けですか」
「うん。ちょっと確認しておきたいの」
「確認?」
「そう。どっちがいい?」
どっち、口の中で反芻して朔はやっと意味に気付く。隣に座った久遠をじっと見て、頬を染めると逡巡した後に口を開いた。
「抱かれるつもりで来たんですが、出来れば抱きたいです」
「正直ね」
予想は付いていたとはいえ、この上背のある中年男を抱きたいと正面切って言われるとは。久遠は半ば呆れつつ、薄い笑みを唇に乗せた。わざとらしいくらいに振りまいた色気に、朔が目線を落とす。
「いいわよ。こんなおっさんに勃つかどうか見てあげるわ」
「そんなこと無いです! 主任、ひろみはカッコいい素敵な人です」
自嘲するように笑った久遠の言葉は、朔の反論に封じられた。ずいっと目の前に迫る真剣な眼差し。その癖おずおずと伸ばされる手は熱かった。
「ひろみ」
伸びた腕に久遠の腰が引き寄せられる。触れるまでは遠慮がちだった腕は、力強く久遠を抱き込み、合わせた唇は荒々しい。その動きに久遠は安堵を覚えた。精神的に包み込み優しくしたところで、逞しい肉体だけはどうしようもない。ノンケの朔にはもしかすると無理かもしれないと踏んでいた所為もあった。
「ちょっと待って」
勢いよくソファへ押し倒され、伸し掛かられる。余裕が無いというよりも、体格差を何とかしようと必死なのに気付いて笑いがこみ上げるが、もう一つまずいことに気付いて、朔の胸を押し戻した。
「あ、俺」
途端にひどく傷ついた表情の朔を見て、久遠は焦って言葉を継いだ。
「これ以上はベッドでしましょ」
「す、すみません。焦っちゃって」
慌てて久遠の上から退いた朔に、久遠は柔らかく笑い掛ける。
「アタシもこんなにその気になってくれると思わなかったわ」
身体を起こした朔に差し出した久遠の手を、朔はしっかりと握って助け起こした。それなりに女性の扱いには慣れているようだ。
「シャワー浴びて来るわ。先に行ってて」
「はい」
態と振る舞いを女っぽくしてみると素直に従う。か弱い振りで甘えてやれば簡単に落ちるだろう。その上で優しく受け止めてやればいい。
そう考えて、久遠は思考を止めた。都合のいい相手にはしたくないと朔は言った。そんな相手に誠実に返さずにどうすると言うのだ。
都合が悪ければ付き合いたくない、どうでもいい人。お互いにそんな自分に疲れたからこそ手を伸ばしたのに。
シャワーを浴び、受け入れるための最低限の処理をする。
タオルドライしただけの髪を手櫛で後ろへ流し、久遠はバスローブだけを身に着け、バスルームの扉を開いた。

朔はベッドの端に腰掛け、シャワーの音へと耳を傾ける。
心拍数が上がるのが解った。シャツの合わせ目を掻き合わせ、拳を握る。
出来れば抱きたい。そう言った瞬間、隣にある身体を意識した。焦りすぎだと自分でも思う。体格差もあり当然自分が抱かれるものと思っていたが、久遠を抱けると思うだけで反応する自分が信じられない。久遠を女のように思っている訳では無い。男としての本能的な部分が訴えるのだ。心を寄せた相手を自分のものだと確信したいと。
ドアの開く音に顔を上げる。バスローブから覗く素肌がやけに白いことに気付いて、目はそこに釘づけだ。
「何? 今更我に返った?」
やけに色っぽい仕草で朔の隣へ腰かけた久遠に、朔はどぎまぎして視線を下ろした。するとバスローブから覗く、綺麗に組まれた足を意識してしまう。
「ひろみ、判ってやってるでしょう」
「当たり前よ。恋人が隣にいるのに、誘惑しないほど初心じゃないわ」
しなだれかかってくる久遠は、クスクスと声を上げて笑っている。それは隠微な響きを帯びていた。
「あんまり煽らないでください。余裕無いんで」
「余裕なんて無くしてあげるわよ」
力強く肩を抱き寄せられ、唇が重なったかと思うと、対応できないでいる朔の歯列を割って舌が入り込んできた。
巧みな技巧に朔の息が上がる。唇が離れると、悪戯が成功したような目をした久遠と目が合った。悔しいが経験値の差は大きい。
「そういうつもりなら遠慮なんかしませんよ」
「いいわよ。望むところ」
うるんだ目で見上げられて、そう我慢が効く訳が無い。ベッドに押し倒してバスローブから覗いた肌に唇を這わせる。嫌悪感は無かった。どころか股間は痛いぐらいに主張を始めている。
「ホントに俺が抱いてもいいですね」
もう一度だけ確認を取った。
「何度聞けば気が済むの。それとも怖気付いた?」
「まさか」
揶揄うような久遠の問いに、朔は速攻で否定を返す。
「もう口は別のことに使って頂戴」
もう一度唇が重なる。かと思うと朔の唇は久遠の顎から首筋、胸元をたどる。バスローブを開き、乳首に吸い付く。そのまま、舌先で転がし強く吸い上げた。
「ちょ、しつこいわよ」
先へ中々進もうとはしない朔に、焦れた久遠が声を上げる。
バスローブから覗く足を幾度も撫で上げる手の動きも、肝心な場所へは触れようとしない。
「もう、いつまで」
「すみません。俺の手で貴方が乱れてくれるの、楽しくて」
口では謝っているものの、手の動きは途切れなかった。その腕がふいに掴まれたかと思うと、朔の視点はひっくり返っていた。
「悪戯はここまでよ」
ニヤリと人の悪い笑みを浮かべた久遠に見下ろされる。惑いなく久遠の指が朔の股間を這った。
「へえ、中々立派じゃない」
爪で軽く鈴口を引っ掛かれ、痛みに朔の顔が歪む。ちょっと調子に乗りすぎたかと思いつつも、抵抗しようとは考えなかった。
そのまま股間をすり合わせるようにして手を添えられる。荒い息遣いがその場を満たした。
二人同時に吐き出した瞬間に、仰け反った喉が朔の目の前へと晒される。朔は高ぶった気分のままにその喉へとかぶりついた。
「ナニ? 吐き出しても賢者タイムとはいかない?」
最初、驚いた顔をした久遠が、喉をさすりつつ朔を見下ろす。久遠にしてみれば、嬉しい誤算だった。男の身体にさして興味がある訳でもない相手だ。無理強いするつもりはない。ところが未だ朔は何処か興奮冷めやらずといった風だ。
久遠の指が朔の尻へと伸びる。二人の精液でどろどろになった指は、簡単に朔の中へと潜り込んだ。
「ホントに抱かれるつもりで来たのね。いただいちゃうわよ」
「どっちでもいいです」
さっきまでの色っぽい久遠もいいが、やっぱりオネェ言葉で強引なのが久遠らしい。
「じゃ、遠慮なく」
濡れた指が朔の奥を探る。
「あ、そこッ」
思わず声が漏れた。奥を探っていた指が一点を掠める。身もだえる朔を面白そうに久遠が見下ろしている。
「覚悟いい?」
「は、い」
優しいから好きなのか、都合がいいから好きなのか。いや、だったらこんなことまで許さない。やっと確信が持てた。
「好きです。貴方が」
見上げるのと、久遠が朔に馬乗りになるのは同時だった。
「くッ、」
「ひろ、みッ」
朔の屹先に濡れた感触が当たる。久遠の顔が苦痛で歪んだ。急に腰を落とそうとする久遠の手に朔は指を絡ませて支える。
「ずるいわ、こんな時に。アタシ、めろめろじゃない」
腰を落としきった久遠が顔を上げた。朔は目を見開く。大きく息を吐き出し、動き始める久遠に、朔は仰け反る。濡れた体内が蠢くように朔の屹立を包み込んでいた。
「ちょ、動きすぎ。イッちゃいます」
「イッちゃいなさいよ」
「勿体ないです。もう少し」
「何処のオヤジよ」
色気の無い直截な言葉を並べつつも、久遠の顔は苦痛と快楽の入り混じった凄絶なものだ。
絡んだ指に力が入る。
「ねぇ、アタシも好きよ」
幸福そうな顔の久遠に朔はほっと息を吐いた。同時に久遠が動きにひたすら快楽だけを追う。今はそれだけで良かった。

翌朝、目覚めた朔は目の前にある熱い胸板の谷間に顔を埋めるような体制だった。ちょっと息苦しいが、それも悪くない。
朔を胸に抱きしめたまま眠る久遠は気持ちよさそうに寝息を立てている。
ベッドサイドの時計に目をやると、まだ起きるには早すぎる時間だ。
もう少ししたら、久遠は目を覚ましてジョギングにでも出掛けるかもしれない。そしたら自分も起きだそう。以前作ってくれた朝食には劣るかもしれないが、味噌汁と卵くらいなら朔も用意が出来る。
身体がキツイようなら、もう少し休んでもらうのもありだ。
これからのこと、自分がどうしたいのか、久遠がどうしたいのかを話しあおう。互いに都合がいいばかりではなく、一緒に歩いていくために。
久遠がもぞりと動き、きつめの瞳が薄く開いた。
「おはよう」
これから新しい関係を築いていく朝だ。

<おわり>

これにて完結です。
何か完成まですごく時間が掛かってしまいましたが、逆転っぽいけど違うっていう 
ノンケ×オネェを書くのがすごく難しく。考え込んでいるうちに、体調を崩してしまって。
仕事も忙しくなってきたので、しばらくはファンタジー更新すると思います。
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