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水竜の騎士<番外> 

第一騎士団隊長 マキアス・ドゥーズの独白


リベア・コントラという名は、多分今では、このティアンナ国内なら知らない奴はいないだろうという程、知られた名だ。
あるいは、リベアと云う名は知らなくとも『焔の剣の騎士』と云えば、十人中十人から『もちろん、知っている』と応えが帰って来る筈だ。

レイシア皇女が、城から攫われたと聞いたとき、正直、第一騎士団はそれどころでは無い大騒ぎだった。
破られた結界は、すぐに張りなおされたものの、城下に散らばった多くの魔物を一匹残らず退治するために、飛び回っていた。
もちろん、他の騎士団の連中も駈けずり廻ってはいたのだが、普段、人間を相手にしている連中では話にならない。
動き方も攻撃も、魔物と人では違いすぎるからだ。
腕自慢の近衛騎士団だとて、まともに魔物と渡り合っていたのは、隊長のバースくらいなものだろう。
遠く離れた国境騎士団の連中だって、城下の騒ぎにまぎれて、他国が何かを仕掛けてくるのでは。と緊張した毎日を送っていた筈だ。

ようやく落ち着いたのは、城壁に掛かっていた満月が、新月に変わる頃だ。
水路や路地に紛れ込んだ連中を一匹残らず退治して、魔術師たちに浄化をさせ、この様子だと辺境の警備も強化しようか。などと考えていた頃、近衛騎士団が編成をしなおしていると噂が聞こえてきた。
どうやら、近衛騎士団で黒の森に入り、皇女を助け出すと云う無謀な作戦を決行しようとしているらしい。
俺は当然、止めた。
「お前らで魔物を相手にするのは無理だ。それに、攫われて十日以上だ。悪いが、もう皇女は生きてはいないだろう」
近衛の騎士にとって、皇女は護るべき相手なのだろうが、正直魔物に攫われた時点で、もう諦めるしかない。それに、婚儀が整いかけていたとは云え、どうしても、皇女でなければならない訳でも無い。
そんな不遜なことを、まくし立てて、何とか諦めさせようとした。バースはいい奴だし、何より王家には必要な人材だ。こんなところで死なせるには行かない。
バースは諦めきれないようで、明日、王に願い出てみると云っていたが、その背には絶望が漂っていた。
大方の予想通り、バースの願いは却下された。
王はこれ以上無駄に兵を失う訳にはいかないと云い、姫のことは諦めるとまで云い切ったそうだ。
がっくりと肩を落としたバースに、一抹の光明を投げ掛けたのは、皇子だった。
「レイシアのことはリベアに任せています。それに、蒼の魔術師も共に行っているようですから。運が良ければ、共に帰ってくるでしょうし、蒼の魔術師だけが帰って来たところで責めたりするつもりもありません」
俺はこのときに初めてリベアの名を知った。バースと御前試合で戦い、いい勝負だった奴がいるとは聞いたが、名など気にもしていなかった。
「あれはレイシアに命を捧げたレイシアの騎士です。最後までレイシアと共にあることを、レイシアも願っている筈です」
助からないと知りながら、命を賭けた騎士がいる。俺は馬鹿だと思ったが、バースは素直に感動したらしい。
御前を後にしたその足で、俺のところへ即座に駆け込んで来たものだ。


だから、その数日後に、ゼルダム王が皇女を連れて帰還したときには、騒然となった。
ゼルダム王が『魔封じの剣』をもっているとは噂に聞いていたが(だからこそ婚儀が成立したのだ)、誰が皇女を助ける為に命を賭けると思うだろうか? 一国の王が。
しかも、横にはリベアがいたのである。
新たな『魔封じの剣』を持った騎士の出現に、国中が沸き立った。
城下を恐怖に陥れ、皇女を攫った魔物を、『光の剣の王』と『焔の剣の騎士』が救ったのだ。ある種の伝説が生まれるのに、そう時間は掛からなかった。

続く、皇女の婚儀は盛大に催され、復職したリベアは、当然の如く、第一騎士団に配属されると云うことになった。
しばらく落ち着かせる意味で、国境騎士団へとリベアを戻したが、いずれはこちらへ配属すると云う約束だ。
実は、それでバースとひと悶着あった。
「『焔の剣』の騎士だぞ。当然、うちの団に決まっているだろう」
「あれだけの忠誠心をもった男が、お前の団! プライドばっかりで固まった頭でっかちの野郎ども! アイツはうちで欲しいくらいだ」
バースは怒っていたが、騎士団長の決めたことに逆らえる筈は無い。結局、うちで引き取ることで決定だ。

まぁ、バースの心配も判らんでは無い。
確かに、家柄自慢の多いうちの騎士団では浮いていると云える。
実際に配属の件を伝えたときの副団長のラフ・シフディの嫌そうな顔は、いかにも貴公子然とした顔立ちに、悪意がにじみ出ていて、嫌な予感がしたものだ。
そうかと思えば、世話係候補が殺到して、収拾が付かない程の人気ぶり。
下位層には受けが良く、上位層には睨まれている。そうかと思えば、王や皇子、西の宮長など、本当に権力を持った人々には可愛がられていて、ますます貴族出身者には『ごますりだけが上手い嫌な男だ』との見方をされていた。


俺が、実際にリベアと顔を合わせたのは、配属の挨拶に来たときが最初だ。
いかにも、食い詰めて田舎から出てきたという風情の、田舎出身の兵士の典型に見えた。兵士というには幾分小柄な身体も、ますますそう見せているのだろう。
ただよく見ると、まっすぐに臆さずに、こちらを見る瞳には気負いも無く、身体も充分に鍛えあげられているようだ。
ひとことで云えば『実直で真面目』を絵に描いたような男だった。
上の目に留まれば、重宝されるだろうが、本人はそんなことをありがたいとは露ほども思っていない。
同じ塔で生活するバースは、いい手合わせの相手が出来たと機嫌が良く、近衛騎士たちはむしろ修練熱心になったと思う。追いつき追い越せと騎士見習いも熱心になった。
かといって、体力だけの男と云う訳では無い様で、リベアの世話係のマーロウは、魔術の理(ことわり)などについて異様に詳しくなった。リベアに教えてもらったのだという。西の宮に出入りしているらしいから、当然なのだろうが、田舎出身の学の無い男かと思えば、そうでも無いらしい。おそらく、ちゃんと学ばせれば、今からでもかなりの教養を身に着けられるだろう。

だが、あの戦い方だけは頂けない。
知識のないまま、魔物との戦いを経験し、しかも、後ろに蒼の魔術師と光の剣の王が控えていたにしても、無謀すぎる。
ギリギリの相打ちさえ狙っているのではないかと云う戦い方。自分の命さえ盾にするような。
魔物の返り血と、自分の流す血に濡れたその姿は、まるで鬼神だ。
最初の戦いのあと、振り返ったその姿を見た瞬間、ぞっとした。


それに問題はその後だ。
村長に魔物は退治したから安心するようにと伝え、陣へ戻ると、リベアと蒼の魔術師がまだだと云う。
朱の魔術師は「あれだけ、魔物の血に濡れたのです。清めの儀式をしています」とあっさりと云うが、残党がいないとは限らない。
どうにも気になって、様子を見に行くと、川の辺りからうめき声がする。
何かあったのかと、剣を握り締め、草に身体を隠しながら、そっと窺った。
その瞬間、声を出さなかったのを、誉めて欲しいくらいだ。
うめき声の主はリベアだった。
リベアは何も身に着けておらず、川に下肢を漬けたままだ。
そのリベアの上で蠢いているのは、リベアの契約の主。水竜が、リベアに絡み付いていた。
リベアの口から漏れるのが、うめきでは無く、殺しきれない嬌声だと気付いた瞬間に、リベアと水竜が何を行っているのか、はっきりと判った。
水竜がリベアの身体を這い回り、リベアが『蒼流』と水竜の名を呼ぶ。
俺の頭を『契約の契り』という言葉が廻った。
リベアと水竜は交わっていたのだ。
小柄だが、ガタイのいいリベアも、神竜の前では子供も同然だった。
その身体がくねる様子に、俺はごくりと唾を飲み込んでしまった。
一度も同性を相手にと考えたことは無い俺だが、水竜に組み敷かれているリベアは妙な色気があった。
リベアがもう一度、『蒼流』と甘く呼びかけたとき、俺はその場を逃げ出した。

あれが、清めだというのだろうか?
魔物の血に穢れたその身を、リベアは水竜によって清められていると?

アレ以来、俺は戦いの後のリベアには近寄らないようにしている。
時折、蒼の魔術師と姿を消すときも、決して近づくなと他の連中にも申し含めている。
大抵、ぐったりとなったリベアを蒼の魔術師が抱えて現れるのだが、その間に行われていることを考えると、頭が痛いどころでは無い。
また、その抱えられたリベアが異様に妙な色気を発散しているものだから、他の連中も好奇心で一杯らしい。
だが、好奇心はネコを殺すという。
また、騎士団の中に、妙な好奇心を発揮する奴がいないことを祈るだけだ。


<おわる?>

番外SS「蒼竜の夢」
続編「騎士の誓い」

という訳で、マキアス隊長から見たリベアでした。
コメントは拍手からどうぞ。返信は掲示板にて。

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~ Comment ~

Re: 堪らんっ!!

ありがとうございます。
いくつかは電子書籍や、商業で文庫にしていただいたものもありますが、基本趣味で「俺得」で書いていますので。ゴツ受けは私が書き始めたころはまだまだ少なく。また読んでくださると嬉しいです。
[2014/08/17 22:32] 真名あきら [ 編集 ]

堪らんっ!!

pixivからやって来ましたが、大発掘です!時代物、ファンタジー、ゴツ受け最強!!大ファンになりましたキャー♡╰(*゚x゚​*)╯無料でこんなクオリティ読めるなんて……振込先は何処ですか?
[2014/08/17 13:35] ジャス [ 編集 ]

Re: 水の魔方陣 炎の剣シリーズ

ありがとうございます!
もっとも長いシリーズなので、愛着もありますし、またネタが出来たらUPすると思います!
[2012/07/04 22:14] 真名あきら [ 編集 ]

水の魔方陣 炎の剣シリーズ

すっごく面白かったです!また番外編を出してくれると嬉しいです!
[2012/07/04 02:40] 黒兎々 [ 編集 ]















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