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勘違いな男<1> 

可愛い後輩に惹かれていた。本気だったのに、何故すれ違ったのだろう。

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久しぶりの日本は、相変わらずごみごみした、せせこましい街だ。
それでも新宿のネオンはゲバイくらいに輝いて、それを押し隠す。

「おや、ショウちゃん。いつ帰ってきたんだい?」
馴染みの店の扉を開くと、マスターの野太い声が耳朶を打った。それさえ懐かしい。
「先週末。帰った早々忙しくてさ」
「このご時勢に羨ましいハナシじゃないの。何にする?」
「ああ。じゃ、アーリータイムズでも貰うよ」
「おや、カクテルじゃなくて? 珍しいね」
「待ち人が来ないと困るからね」
僕はクスリと笑った。昔は待たせてばかりだったアイツに、今日は待っていると云った。大学を出て五年。ということはアイツと別れてから五年以上経っている。もしかすると、僕には会いたくないかもしれない。添田に伝言してもらったものの、一方的な約束は迷惑だろう。
「待ち人が来るまで、俺と飲まない?」
隣に座ってきた男は、スレンダーな身体と甘いマスクの、一般的に云えば、かなりのレベルのいい男だったが、僕の好みじゃ無い。
「遠慮するよ。君、僕の好みじゃないし」
「ふん。大きく出たね。どーゆーのがいいワケ?」
どうやら、振られることには慣れていなかったみたいだ。『俺で不服なら、どういう好みだ』と云わんばかりに絡んでくる。
「君には理解出来ない好みかもね」
僕の脳裏に、別れた頃のアイツの姿が思い浮かんだ。
それまで付き合ってきた、派手な女たちや可愛らしい少年達とはまったく違う、細身だがしっかりと鍛え上げられた筋肉の付いた躯。
だからこそ、コンプレックスの塊になっていたアイツ。
アイツも社会人になって、二年?三年か? 出会ってから別れるまでも、アイツは変わった。今はどんな風になっているのだろう?




僕が彼を初めて見かけたのは、新入生相手のサークルの勧誘の為に出た、放課後のキャンパスだった。
よくある、ナンパなテニスサークルだ。三回生になった僕は、本来、サークルの勧誘なぞ二回生に任せて悠々自適に過ごしていられる筈なのだが、同じサークルのメンバーに賭けで負けて、駆り出されてしまった。
「どうせ、お前が合コンでお持ち帰りするんだろ? 自分で調達して来いよ」
失礼な言葉を投げかけたのは、高校時代からの悪友で、昨日の賭けの胴元・真部だ。
「あいつ、わざとじゃないだろうな?」
穏やかな春の日差しは、授業さえも放り出して遊びに行きたくなるくらい清々しい。
こんな自分を見越して、賭けを持ちかけたのでは?と疑いたくなる。

「君、バスケット部、どう?」
「いや、俺はどこも入らないから……」
「何言ってんだよ。お前は柔道部に決まってんじゃん」
「水上、俺、ちょっとそれは…」
そこかしこで、結構強引な勧誘が繰り広げられる。目の前でも一件。ああ、柔道部は捕まったらシツコイぞ。
僕は目の前にいる、気の弱そうな新入生にちょっと同情した。肩幅は広いが、平均的な身長と、細い身体。僕は素直に「案山子」を連想した。
友人が先に入ってしまったらしく、強引に連れて行かれている。
「部長! こいつですよ!」
「ああ、君が! 話は聞いてるよ!」
柔道部で、同じゼミの添田が、新入生の肩に手を廻した。

その瞬間―――――――

あたりをつんざく悲鳴が響き渡る。
僕の目の前で、新入生は身体を抱きかかえるようにして座り込んでいた。
添田は、呆然とソレを見詰めていたが、僕はすぐに駆け寄る。
「すまん、お前、まだッ……」
隣の友人らしい奴が、覗き込もうとするのを止め、僕は、正面に廻ってその場に手を付いた。
「大丈夫だ」
彼の身体がぴくりと揺れる。良かった、声には反応する状態だ。
「誰も君を傷つけたりしない」
女を口説く時のような優しい声で囁く。
「ゆっくり息を吐いて。吐き終わったら、自然に息が入ってくる」
過呼吸気味になっていて、息が出来なくなっている。本当は袋か何かかぶせてしまえばいいのだが、この状態だと、より一層パニックを起こしそうだ。
「もう一回だ。息を吐いて」
彼は、僕の云うままにゆっくりと呼吸をもどしていった。
「もう一度―――――」
「だ、大、丈夫です。ありがと、ございました」
切れ切れに、何とか礼を云う。上げた顔は童顔ぎみの可愛らしい造りだった。
「すまん。お前、俺が肩叩いても、平気な顔してたから、てっきり」
「いや、はっきり云わなかった俺も悪いんだ」
新入生が友人に謝るが、別に彼の所為じゃない。
「接触障害だよね。ホントに大丈夫かい? 無理しない方がいいよ」
触れると云う行為に対する、拒否反応。僕は立ち上がって、手を差し出した。
「あ、ありがとうございます」
僕の手を掴んで立ち上がった彼の背は、以外に高い。気の弱そうな様子から、もっと小柄に見えた。
「すみません。俺、そういう訳で、柔道止めたんで」
新入生は、今度は添田に向かって頭を下げる。
「残念だな。本当に。あんなに強かったのに…。病気じゃ仕方ないが……」
「すみません」
頭を下げる姿は、隣にいる添田たちなんかとは比べ物にならないくらい細い。本当に、この子が柔道なんかやっていたのか? 
「ご迷惑をお掛けしました。助かりました」
「じゃ、今度は僕を助けてくれない?」
「は?」
丁寧に頭を下げる新入生に、僕はいたずらを思いついて、微笑みかけた。
そう。本当に『いたずら』のつもりだったのだ。このときは。


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