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勘違いな男<3> 

勧誘などと云う真似をした割に、僕は、放課後サークルに出るのは、余り好きじゃなかった。どうせ、ホンキでテニスやるより、その後に呑みに行くのが目的のサークルだ。
だが、それにも拘わらず、ヒロはバイトが入っている日以外は、必ずサークルに顔を出していた。身体を動かすことは基本的に好きらしい。
力強いストロークで、半ば本気でボールを追い掛けるヒロは、男受けはいいが、女の子たちには人気が無かった。
「おーい、ヒロぉ。お前、この後の居酒屋どうするよ?」
四回生の杵築さんは、ヒロがお気に入りらしい。しょっちゅう飲み会の誘いを掛ける。
「え~、俺、金無いんで、またにしてくださ~~い!」
「またってお前、全然誘いに乗らないじゃん。たまには付き合えっての」
ヒロはサークルの飲み会にはほとんど参加しない。というのも、最初に参加した時に、事情を知らない杵築さんが、酔ったあげくに行きすぎたスキンシップを敢行し、押し倒されたヒロは恐慌状態に陥ってしまい、女の子たちに、一斉に引かれてしまったからだ。
まぁ、彼女らの気持ちは解からなくも無い。一緒にサークルに入ったクラスメートは明らかにヒロ目当てだったし、そのヒロが男(僕のことだ)に介抱されてるのなんか見たくも無かっただろう。それは、僕目当ての女どもも同じ事だ。
「悪かったと思ってるから、誘ってるんじゃねーか。俺が奢るって」
「ホントに今日はバイトなんすよ。マジで金無いんで、サボるとまずいんす。すいません」
「仕方ねぇなぁ。次は付き合えよ」
「奢ってくれるんなら、付き合います!」
ヒロは着替えもそこそこに走り出て行く。
「何だ、アイツ慌ただしいな」
杵築さんは、断られた所為か不機嫌だった。
「駅前のコンビニのバイトでしょう。五時に入るって云ってたし」
「五時! 今、四十五分だぜぇ? 走って間に合うのかよ」
僕がフォローを入れると、杵築さんが反応する。
「体力あるなー。何であんな病気かね」
「体力と精神的な問題は別だと思いますが」
よくある勘違いだ。スポーツマンだから、豪快だとか、神経が太いとか。心身症などは文系の繊細な人がなるものだと云う決め付け。
実際は、どんな育ち方をして、どんな体験をしたのかが、一番のファクターになっているのだが。
「第一、女じゃあるまいし、あんなに怯えなくてもなぁ?」
「先輩たちは知らないから、そんな勝手なこと云うんですよ。アイツ、ヤクザにリンチにあって死に掛けてるんですから」
さすがに、黙っていられなくなったらしい二回生が、口を挟む。
「ヤクザにリンチだぁ?」
「しかもそのヤクザの仲間に、退学した空手部の奴がいて。あいつ仲良かったから二重にショック受けてたんですよ!」
明らかに、むっとした口調だ。
「何ムキになってんの? 河西、もしかしてお前、ヒロに惚れてんじゃねーだろーな」
「杵築さんはすぐそれだ。それが嫌なんだよ。面白がってるだけだろ」
河西は、益々イライラした口調で、吐き捨てると、荒々しく更衣室を出て行った。
「ケッ、だせぇ」
杵築さんが面白がっているのは明らかだが、このまま仲違いさせておくと、せっかくの楽しいサークル活動に亀裂が入りかねない。何で、僕がとは思いつつも、そっと河西の後を追った。

「河西、待てよ」
呼び止めると、河西はすぐに足を止める。
「柿原さん」
「杵築さんが、ああなのは、今に始まったことじゃないだろう。苛つくと、余計面白がらせるだけだよ」
僕が云うことくらいは河西もすでに判っている筈だ。だが、確かに杵築さんは、人の傷を余計にえぐる様な真似をしたがる傾向にあった。
「解ってても腹たちますよ。俺、ああいう人好きじゃないです」
「イラついたら負けだよ。河西はヒロの同級生だったのかい?」
「ええ。同じクラスになったのは、三年の時だけですけど。二年の頃にはあいつちょっとした有名人でしたから」
「柔道部だったらしいね」
聞いたのは、添田からだ。添田は未だにヒロに誘いを掛けている。
「柔道部の割りには小柄じゃないですか。そのくせ自分より大きい奴を投げ飛ばすもんで、ファンも多かったんですよ。それが三年に上がって、ひと月くらい休んでたかと思うと、出てきた時には、げっそりやつれて――それから、ずっとあんな風で。大学入って、少しまともになってきたのに」
「河西もヒロのファンなんだ」
「そーですね、出来ればもう一度見たいです」
河西は寂しげにつぶやいた。




お互いに掴まれようとする襟に掛かる腕を跳ねのける。
距離を図り、睨み合う。今にも相手に飛びかからんとする、獣のように。
画面の中のヒロは、今よりもっと幼い顔立ちで、綺麗な筋肉のついた男らしい躰をしているものの、対峙した相手より小さかった。
ヒロの腕が上がる。そう認識した瞬間、対峙していた男の一回りは大きな躰が宙に浮いた。
かと思うと、男の躰は畳に叩きつけられていた。




短いビデオだ。練習風景をとったものらしいが、立ち上がった男の悔しそうな顔を見ると、手加減ナシで負けたらしいことは、明らかだった。
僕は、ビデオの中で動くヒロの、野生動物みたいな躍動感に魅せられた。
これはファンが多かったというのもうなずける。
添田が諦め切れない訳だ。
こんなヒロを見てみたい。そう僕は唐突に思った。


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