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勘違いな男<4> 

「さ、呑め~」
「いただきます!」
ヒロは、ジョッキに口を付けると、一息にチューハイを飲み干した。
酒には強いらしい。杵築さんに勧められるまま、何杯も飲み干してもふらつく様子も無い。
「なぁ、ヒロ。お前まだ触られんの駄目?」
「不意打ちじゃなければ、結構ヘーキっすけど」
「んじゃ、触っちゃお」
杵築さんは何を思ったのか、いきなりヒロの身体に抱き付いた。抱きかかえたまま、頭をぐりぐりとかいぐる。
「まーったく、ナマイキなんだよ。男同士のスキンシップも出来ないなんてよー」
「すみません」
体育会系でしつけられたものか、ヒロは決して、先輩に逆らわない。
「仕方無いでしょう!病気なんですよ」
あれ程云ったにも関わらず、河西は相変わらず杵築さんに反発していた。
「大丈夫だって、河西。俺、大分慣れて来たんだからさ」
ヒロはとりなす様に云う。要約すると、杵築さんに逆らうなと云うことだ。
「俺だって、情けないとは思ってんだから」
「ほら、ヒロだって、そう云ってんじゃねーか」
杵築さんはご機嫌だ。大体、こういうタイプは逆らわれるのが嫌いなんだ。お山の大将は、調子に乗せておけばいい。ムキになると、逆効果だ。わざわざ機嫌を損ねる必要は無い。

「河西、これサンキュ」
僕はわざと遮るように、河西にかばんから取り出したビデオを、差し出した。
「ナニ何? エロビ?」
目聡く見つけた真部が、さっそくまぜっかえす。
「まさか。そんなに困ってないよ」
「そーですよ、俺、柿原さんが満足するよーなすごいの持ってないですよ」
「えー、じゃ、何のビデオですか? 柿原さんって、どんなの見てるんです?」
今日は、ヒロが参加すると聞いて、ちょっとオカンムリだった女の子たちが、話に乗ってきた。大体、軽いノリでサークルに入った女の子たちには、杵築さんみたいに、先輩だと云うだけで、威張っているようなタイプは嫌われているし、その先輩に気に入られているヒロも同類らしい。
「柔道の練習試合のビデオだよ。すごい選手がいるっていうから、貸してもらったんだ」
「辞めたのもったいないって云う意味、解かりますよね?」
「うん。僕も思うよ。もったいない。貴重な映像ありがとう」
「柿原さん、柔道とか興味あるんですか?」
僕らしか解からない会話に焦れた女の子が、隣に座って話し掛けてきた。
「僕だって男だよ。自分じゃやらないけどね。観戦は好きだな。柔道だけじゃなく、空手とかボクシングとか」
「ええ~っ、意外!」
「そんな風に見えな~い!」
じゃあ、どんな風に見えるんだ? 勝手な理想像を作り上げるのも、いい加減にして欲しい。とは思うものの、平和に無難に過ごしたい僕は、あいまいに笑った。
「じゃあ、今度ボクシングの試合とか連れてってくださいね」
「付き合ってくれるんならね」
女の子たちの言葉の裏にあるものは承知の上での言葉遊び。そんな気が無いのは承知の上。
「ぜひ、誘ってください」
横に座った一年生は、身体に自信があるのか、僕の腕にやわらかい胸を押し付けてくる。
「あ、ずる~い!」
競いあうように、今度は反対側の隣に座った子が、スーパードライを注いでくる。こちらも、確か一年生だ。
「飲んでくださいね。柿原さん」
「柿原さん、何かおつまみ取りましょうか?」
女の子たちは次から次へと、『面倒見のいい気が利く私』の演出を繰り広げる。正直、うんざりしていた。
「ほら見ろ、お前に女の子集中じゃん」
真部がむっとした顔でのたまう。そういえば、左隣の巨乳童顔系は、真部のストライクゾーンだ。狙ってたらしいな。
「早紀ちゃんだっけ? ヒロの友達だよね?」
「覚えててくれたんですか? 嬉しい!」
「当たり前だよ。僕は、可愛い子は忘れないから」
ヒロが連れてきた子だ。忘れる筈も無い。
「柿原さん、私は?」
「久子ちゃん、裕美ちゃん、亜由美ちゃんに美菜ちゃん」
いつの間にか囲んでいた女の子たちの名前を次々に読み上げる。別に、女だから覚えてる訳じゃ無いが、この場はそういうことにしておいた方がいい。
「こいつ、うちの大学のオンナ、全員の名前覚えてるんだぜ~」
真部が云うと、女の子たちの目が好奇心からちょっとだけ、尊敬を含んだものに変わる。真部としては、君たちだけじゃないを強調したかったのだろうが、作戦間違ったな。
「女の子だけじゃ無いよ」
「え~、すごぉい!何でそんなに覚えたんですか?」
「そんなもんじゃないよ。趣味かな。実益を兼ねて」
僕は正直に白状した。大学での情報集めは、既にデータ収集を兼ねた趣味になっている。
「ホントに? 全員?」
「うっそ~」
ああ、かしましい。女は嫌いじゃ無いけど、このかしましさが鬱とうしくなるときがある。
周り中を女の子に囲まれた、男なら羨ましいであろう状況に、僕はうんざりするだけだった。



「お前、またオンナ集めまくってんじゃん」
トイレで一緒になった真部が、ぐちぐちと言い募る。
「うるさいよ。今日はソレが目的で参加してる訳じゃ無いんだからな」
第一、僕は同じ大学の女の子には、手出ししない主義だ。後が面倒なので、恋愛ゲームは楽しんでも、寝るのなら後腐れの無い大人のオンナがいい。
「僕は早目に潰れるから、ヒロに送らせてくれない? その代わり、真部の狙いの早紀ちゃん潰してやるから」
「外道野郎。そのうちオンナに正体ばらすぞ」
「そしたら、男にターゲット絞るさ」
「節操ナシが!」
男の下半身に節操なんてあるのか? 面倒は嫌いだけど、あえて避けようとは思わないし、本当のことなんで、真部に反論する気も無い。
「乗らないのか?」
「乗らない訳無いだろう。くっそー、足元見やがって!」
真部が悔しそうに、奥歯を噛み締めた。ははぁ、コレは。
「ホンキなんだろ? 僕だって今回はホンキなんだ。杵築さんに邪魔される前に、いただくさ」
「杵築さんはその趣味じゃ無いと思うぞ」
「知ってるけどさ、嫌なんだよ。ヒロにべたべた触って」
「見当違いのやきもちも大概にしろよ。杵築さんより先に潰せばいいんだな?」
「頼むよ」
僕が云うのに、真部は手でOKの形を作る。
後は行動あるのみだ。


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